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「海里 に執着して、なにも見えなくなってて。自分の手で、自分の手にあると分かんないまま、いろんなものを壊してくんすわ。自分のこと、想ってくれてる相手がいても気付かないで」
「……どっちにせよ、りっくんに言われたいことじゃないんだけど。それにオレは海里以外どうでも良いもん。利用できるものは利用するの。オレが良いんだから、オレは可哀想じゃないよ」
乱れた息を整えようとしながら、柚陽 は少し冷静さを取り戻したようで、「普段通り」に近い声で言う。まあ、隠しきれない怒りとかイライラは、ちらちら窺えているんだけど。
海里以外、どうでも良い。
陸斗 だってその気持ちが分からないではない。だって以前の自分は「そう」だったから。
今だって、本質はそんなに変わらないのかも、しれない。紗夏 が気にかかるのは、一瞬海里とダブってしまったから。紗夏の想いを実らせたいのは、「海里を守ってくれる」っていう約束があるから。紗夏の想いが実れば、柚陽はもう、海里に手出ししないかもしれないから。
これは、柚陽に説教なんて出来ないし、「お前に言われたくない!」って怒られて当然っすわ。柚陽は別のところで怒っていたけれど。
でも同時に、あの時の紗夏について何かを思えるくらいには、港 たちを思うくらいには、今の陸斗は海里以外を「見て」もいた。
それに、ソレと気付かず大切なものを壊してしまうのは、堪える。
柚陽が勝手に自滅する分には「ざまあみろ」って言いたい自分もいるけれど、なんせ今柚陽が手に乗せてるのは、紗夏っすからねぇ。
深入りは危険だと思う反面、「他のもの」を見られない柚陽に、可哀想だと言わずにはいられなかった。
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