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「アンタさ、愛を持って壊すんだよね? だからオレとアンタが海里(かいり)にした事は同じでも、根本が違ってる。理解は、やっぱ出来ないっすけど、アンタのソレは愛情表現なんだから」 「そうだよー。だからりっくんには傷付けなかったでしょ? りっくんの希望通り、理想通りの子だったと思うんだぁ、我ながら」  さすがに満面の微笑みで、暗に、「お前には興味なかった」って言われるのは、ツライかもしれない。  たとえ偽物であっても、たとえそれさえ柚陽(ゆずひ)の計画通りだったとしても、あの日々に、あの時は幸せを感じていただけに、尚更。この子のためならなんでも出来る、って思ってたんすけどね。柚陽は最初から陸斗(りくと)の事など、道具としてしか見てなかったんだ。  そんな柚陽に夢中になって、本当に大切なものを壊した自分は愚かだけど……それは今の柚陽も同じだ。  ……まあ、柚陽にとっては、紗夏(さな)にそこまでの価値はないのもしれないけど。  だけど。陸斗の脳内に過るのは、紗夏が愛おしそうに見つめていた、包帯が巻かれた腕。  紗夏は自分を「代用品」と言った。「代用品」なら、海里にしたい事をぶつけていても頷ける。でももし、そこまでの線を越えたのが、紗夏だけだったら? そこには少なからず、柚陽からの、なんらかの感情があるんじゃないだろうか。  なんて、甘すぎる考えっすかね? 浮かんだ考えに陸斗は思わず苦笑して、それを見咎めた柚陽が、今度は叫ばなかったけれど、こてん、首を傾げた。 「どうしたのー? 突然、「やれやれ」みたいな感じで笑ったりして」 「合ってるっすよ。我ながら、自分の甘さにあきれ返ってたトコなんで」

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