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「オレ、けっこーモテるんだよねぇ。だから告白も何回かされてるの。でもオレは海里 に一途だから、ずーっと断ってたよ。だけどしつこい人間っているんだよね」
にこっ、なんて明るく笑いながら、手は羽虫でも追い払うように「シッシッシ」と振られる。その動作は紗夏 を思い出すとイライラするけど、陸斗 にも分からないではない。興味がない人間からの告白っていうのは、鬱陶しい。
「代わりでも良い。1回でも良いから、って関係をせがまれるの。……まあ、オレだって健全なオトコノコだからねぇ。興味はあるし、いざ海里と本番、っていうトキに上手く壊せなかったら嫌だし。無理矢理組み敷いてやろうにも、海里の周りには港 と先輩。まあ、仕方ないかって、その子たちの望み通り、海里の代用品になってもらったんだ。まあ、それなりにこっちで海里に少しでも似てる子、って基準は設けたけど」
「で、その子達を壊したんすか」
その中に紗夏もいたんだろう。顔立ちこそ似ていないけれど、なんとなく雰囲気は似ていた。
とは言え陸斗が見たのは海里が壊されて、紗夏もどこか外れてからで、当時はどうだったのかなんて分からないけど。
下手なのは自覚していたけど、半分「誘導尋問」目的で口にした言葉に、柚陽は大きく舌打ちした。
今日の柚陽は感情をむき出しにしている。普段なら飄々と「無邪気な子供」っぽい柚陽を貫くというのに。もしかして、全部バレてるんだろうか。陸斗の内心に、不安がよぎった。
かと言って、ここで退いてしまったら余計にわざとらしいけれど。
「りっくん、海里を壊した罪悪感で理解力が壊れちゃったのかなぁ? オレは、愛がなきゃそんなことしない、って言ったよねぇ」
とんとん、人差し指で軽く自分の頭を叩いてみせながら柚陽は言う。
「そりゃあ代用品だし、練習も兼ねてるからね。よっぽど海里に似てる子には、やってみようと思ったよ? だけどせいぜい、殴ったり首を絞める程度。本格的にアトが残るくらい壊したいって思えるような、優秀な代用品はいなかった」
本人からすれば「代わりで良いから」と縋る彼ら彼女らがよっぽど邪魔だったのか。それとも陸斗に「そう思ってると思わせたい」のか。やれやれ、とばかりに息を吐く。
ただ話は終わっていないようで、「1人を除いてね」あまりにもわざとらしいけれど、柚陽はそう、言葉を繋いだ。
「1人だけ。たった1人だけ、それなりに大きな怪我を負わせても良いって思う子はいたよ。さ」
紗夏。
そう続くと思ったのは、希望が生んだ幻聴だろうか。
けれど柚陽の言葉を全部聞くことは叶わずに、「いい加減にしろって」そんな声が、会話を遮った。
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