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げぇ。柚陽 の顔が露骨に歪む。遠慮も、繕うこともしないで、思いっきり。
柚陽が声を荒げた時以外は、会話内容に見合う声量で話していた。でも、そうは言っても他に学生はいるし、さっき柚陽が声を荒げたので注目は浴びている。聞き耳を立てようと思えば、立てられただろう。
目線を柚陽から声のした方へと向ける。果たしてそこには友人が、あの日、柚陽の異変を知らせてくれた隼也 が不機嫌そうな顔で立っていた。
柚陽の肩を掴む手に力が込められているのが、傍から見ていても分かる。
「お前、いい加減、月藤 を利用すんのは止めろって」
誰っすか。挙げられた名前に一瞬戸惑って、さっき抱いた僅かな期待がしぼみそうになる。
話の流れから、隼也が言っているのは「柚陽が代用品にしている誰か」で間違いなさそうだけど、唯一特別視したのは紗夏 じゃないとでも言うんすか。
そうだとしたら、紗夏があまりに辛いんじゃ。
表情こそ「突然隼也が入ってきた驚き」を浮かべながら、内心はひどく項垂れていた。でも、まだ。昨日見た紗夏の家の表札を思い出す。「Sana.T」。紗夏の名字が月藤でも不思議はない。
果たして。
隼也の手を振り払おうとがむしゃらに腕を動かしながら、「ほんっっっと」柚陽は露骨にイライラしながら、吐き捨てた。
「お前は紗夏のことになるとうるさいよねぇ。紗夏の所有権はオレにあるんだし、黙っててくんないかなぁ!?」
言葉自体は、やっぱり気分が良い物ではなかったけれど。
そんな風に柚陽が吐き出した言葉に、今ばかりは陸斗 も安堵した。
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