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絡んで絡まる
「それで、港 は柚陽 と隼也 の関係について、知ってるんすか?」
「知らねーよ。柚陽との付き合いはそんな短くねぇけど、アイツの交友関係まで把握してはねぇし、オレ等がそこまで親しかったと思うか?」
「思わねぇっすけど、付き合いの長さから名前を聞くことくらいはあったかな、って思ったんすよね」
メールを送った結果呼び出された喫茶店で港と向かい合いながら、陸斗 は呟いた。
冷め始めているコーヒーを口に運ぶ。まだまだ問題は山積み、罪悪感は容赦なく陸斗を潰しにくるけど、さっき海里 の容態を聞いたのもあって、席に着いたのだしと注文した飲み物を口に運ぶだけのゆとりは生まれた。
でも、長い目で見ると、どん詰まりっすよねぇ。
まさか隼也本人に「紗夏 とどんな関係なんすか?」って聞くワケにはいかない。港が知っていれば1番聞きやすいし、対策もしやすいと思ったのだが。
「うーん……アンタが知らないんじゃ、波流希 も知らないっすよねぇ……」
「多分な。先輩、あれで結構過保護だから、海里の交友関係や危害を加えそうなヤツくらいは把握してそうだけど。さすがにソイツと紗夏の関係や、なんで柚陽がソイツを毛嫌いしてるかまでは分からねーだろ」
港はそこで1度言葉を切り、自分のコップに手を伸ばす。が、ぴたっと手を止めれば、「でも」なにか思い当たる点があったのか、呟くように切り出した。
「柚陽がオレと先輩を嫌ってる、っていうのは知ってるよな」
「まあ本人も話してたし、そうでなくても察せるっすねぇ。さすがに」
そしてあの時柚陽は、港たちに対するのと同じくらい、もしかしたらそれ以上に隼也を嫌ってるように見えた。
普段の「ぶりっこ」はナリを潜めていたし、嫌味ったらしい言い方じゃなくて、結構ストレートな嫌悪。
「でもまあ、アイツが感情を荒げるコトはなかったんだよ。ただ高校の時だったかな、1度だけ叫んだ事があったから……もしかしたらそん時から仲は悪かったのかもな」
「あれ? でもアンタ、隼也のコトは知らないんすよね?」
「ああ、知らねーよ。ただ、中学生の学校見学の時だったか? とにかくなにかあって、その話をオレ等がしてるのを聞いてた柚陽が、突然怒ったんだよ。年齢差からして、オレ等が高3なら紗夏は中3くらいだろ」
「そうっすけど、……だとしたらやっぱ、根深いっすねぇ……」
頼もしかった味方が敵になる可能性は高くなってしまったようだ。陸斗は思わず、溜息を漏らした。
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