361 / 538

 外見はそんなに似ていない。でも、ドアスコープ越しに見た紗夏(さな)の雰囲気は、嫌でも海里(かいり)を彷彿とさせたのだ。振り払おうとしても、「勘違いだ」って言い聞かせようとしても、そんな上手くはいかない。  だからきっと陸斗(りくと)は、それほど強く紗夏を振り払えないだろう。もちろん、紗夏に恋心は抱いてないし、紗夏を助ける事で海里まで助けた気になろうなんて、少しも思ってないけど。  でもやっぱり、放っておけなくて。 「似てるとは思うっす。多分ここまで紗夏のことを気にしてる理由は、海里を守って欲しいから以外にもある。もちろん重きはあの約束っすけどね」  なんだかんだ言って、自分も紗夏を利用してるかもしれない。そう思うと、自嘲的な笑みが漏れた。  そしてそれは、(みなと)の目にも入ったんだろう。ぱしん、港の手が軽快で間抜けな音を立てて陸斗の頭を叩いた。  「ちょっと、なんすかー!?」なんて言いながらも、本気で怒ってはいない。むしろ、引き戻してくれて感謝さえしてる。 「だから考え過ぎんなって。紗夏はお前を利用しようと思った。お前も紗夏を利用した。それで良いんだよ。どっちかが責められるコトはない」 「……んー、そうかも、っすねぇ」  港の言葉に、陸斗の歯切れは悪くなる。そんな陸斗を呆れたように見つめて、「はっ」鼻で軽く笑ってみせた。  本気でバカにするためと言うよりは、からかうような。どこか、やさしいような笑い方。 「お前は、意外とやさしーよな」  そんな笑顔を浮かべながら、港は、そんなとんでもない事を口にした。

ともだちにシェアしよう!