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「……は?」
港 の言葉は予想外で、思わず間抜けな声があがっていた。オレがやさしい? その言葉は陸斗 には程遠いと思っていたし、よりにもよって港に言われるとは思ってもいなかった。「嫌味の一種っすかね?」思わずそう疑ってしまっても、「疑い深い」と非難する人間はいないだろう。
なんせ陸斗は自分の大切な人であり、港も大切にしている人に「あんな事」をした。なのにその港から「やさしい」と言われるなんて。
これ、言葉通りに受け取る人間いるんすかね?
いるとしたら、ちょっと問題あるくらいには能天気な人間だろう。
「嫌味でもなんでもねーよ。オレが言っても嫌味にしか聞こえねーだろうけど」
「アンタが本気でオレをやさしい、なんて言ってるなら、病院に行く事をオススメするっす。オレのせいでアンタまで壊れたのかもしんねーけど」
「あいにく、オレは正常だよ」
港はため息を1つ漏らす。
「確かにお前のした事は許してねーけど。好きなヤツにそんだけ尽くせるってコトは、やっぱ根がやさしいんだろうし、お前が紗夏 の事も考えてるのを見ると、なおさらそう思う」
「ただ、臆病なだけっすよ。海里 を守って欲しい。でもそのために紗夏を不幸にしちまうのは、違う気がするんすわ。まあ、そうしないと海里が不幸になるっていうなら、紗夏を不幸にしちゃうんだと思うけど」
やっぱり港の指摘通り、少し肩入れし過ぎてるかもしれないっすねぇ。気を付けないと。
そんな風に内心で強く決意する陸斗に、港は小さく微笑んだ。ぼそり、「まあ、良いんじゃねーの」呟いて。
「海里は人の不幸の上に立って幸せを謳歌できるタイプじゃねーし、……アイツもお前が幸せじゃなきゃ、意味、ねーだろうから」
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