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 じと、なんて。  明らかに、わかりやすく、「疑ってます」という眼差しを真っ向から受ける事、数分。多分1、2分だったソレが、陸斗(りくと)には何時間もに感じられたけれど、どうにか信じてもらえたらしい。  「ん、そうか」なんて、拍子抜けするくらいに軽いノリで隼也(しゅんや)が言うのが聞こえて、やっと、まともに息が出来たような気さえした。 「まあ、陸斗がそんな変な事をするとは思ってないけどな。月藤(つきとう)柚陽(ゆずひ)に熱上げてるトコを見ると、どうしたって心配になっちまうんだ」 「……1つ、変な事聞いても良いっすか?」  安心した様子の隼也を刺激して、自ら警戒対象にされるようなリスクは、あまり犯したくないし、犯すべきじゃない。  でも、紗夏(さな)との約束を考えると、無難な道ばかりを選ぶというワケにもいかないだろう。緊張はするっすけどね。1つのミスが命取りになりかねないんだから。  なんとか覚悟を決めて、ぐっと、手を強く握りしめて。  「なんだ?」そう訊ねてきた隼也のその言葉を、「聞いても良い」という肯定だと判断して。 「……柚陽が大学をサボっていた時。柚陽なら何かしてる、そう思ってオレに声をかけてくれたんすか?」

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