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「そうだな。多少月藤(つきとう)を悲しませることになっても、アイツとは引き離した方が良いと思ってる」  考えてる素振りは本当に一瞬で、隼也(しゅんや)陸斗(りくと)の言葉に肯定を返した。幸い、怒らせたり、怪訝に思われることはなかったけれど、良くない結果ではあるだろう。  思わず漏らしそうになった溜息はなんとか堪えて、「そっすか」それだけ呟いた。  隼也の方はと言えば、自分の答えにそれなりの自信とわずかな不安でもあるのか、少し苦笑を浮かべて頬を掻く。 「まあ、オレが口出しできる問題じゃないのは分かってるけどな。でも、あんな状況許せねーし、アイツがしてることも見逃せない。だからって、月藤が傷付かない代わりに海里(かいり)が傷付け、とかは思わねーし」 「……それ言われたら流石に、オレも怒るっすわ。そんな資格、オレにはねぇっすけど」  返しながらも、注意深く隼也の顔を見つめる。一応その言葉に嘘はなさそうだけれど、結局人間なんてなにをするか分からない以上、警戒はしておいた方が良いのかもしれない。  誰かを大切だと思って、その誰かを守るためから、他の人間なんて途端にガラクタ以下に見えちまったりするし。  それは自分が過去にしでかした事を思い返すことでもあるため、苦しげに苦笑を1つ浮かべた。 「……まあ、だからオレは、月藤とアイツを引き離すのに今までも、これからも尽力するだけだよ」

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