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「実は昨日、月藤 が知らない男と話してるのを見ちまって。アイツのことがあるし、なんかされてないか、心配になったんだ。……陸斗 、なにか知らないか?」
バレている。
「知らない男」が海里 の親友とも言える港 だとは気付かれていないようだから、それはまだ良かったけれど。
でも、昨日の港からの報告では「隼也 の姿はなかった」と言っていたはず。ああ、でも「嫌な気配もした」って言ってたから、コレだったんすかね。
港は空調の効いた喫茶店だったのに、思わず震えたと言っていた。陸斗の方も震えあがりそうだ。
それでも、ここでおかしな行動を見せてはいけない。なんせ、隼也は紗夏 のことになると、人が変わる。僅かな動揺だって、簡単に見透かしてもおかしくないだろう。
「知らない男、っすか? 学校のクラスメイトっすかね?」
そう無難な答えを返せば、はっきりと隼也の首は横に振られた。「いや、それはない」なんて自信満々にきっぱりと否定される。
聞いている陸斗が、思わず面食らうほど見事な断言振りだ。
普通、自分と違う学校に通ってる相手のクラスメイトを、こうもはっきり断定できるっすかね?
「明らかに月藤と同い年には見えない。オレ等と同じか、せいぜい1つ下。それに月藤のクラスメイトにそんなヤツいなかったし」
「じゃあクラスの違う同級生とか? 子供っぽい大学生も大人っぽい高校生もいるっすからねぇ」
「あれは大学生で間違いねーよ。それに月藤の同級生にアイツはいなかった」
「隼也、紗夏の同級生、全員把握してるんすか!?」
演技ではない驚きが、するりと喉から漏れ出た。というか、怖い。高校の同級生なんて少ない人数ではないだろうに。そんなにきっぱりと断言できるほど、把握できるんだろうか。正直、クラスメイトの時点でオレ的には恐ろしいんすけど。
そんな陸斗の胸中を知ってか知らずか。隼也は心底から不思議そうに瞬きを数回して、
「普通だろ? だって月藤が心配だしさ。ただでさえアイツみたいな、おかしいのに捕まってるんだから」
知っているのが普通だと、言い放った。
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