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「それでさ、陸斗 、月藤 からなにか聞いてねぇ?」
「え? でもオレはそんなに紗夏 と親しいワケじゃないっすよ?」
迂闊なことも言えないだろうと、陸斗は言葉を選びながら応じる。あまり目を付けられることはしたくないけれど、無難なトコから眺めていたって結果は分からないだろう。なんか踏み込まないと、隼也 の内心は掴めなさそうだ。
コレが演技だったら暴かないといけないし、無自覚だったらもっとタチが悪い。下手したら柚陽 以上っすねぇ。
自覚があって「好きだから壊したいんだよ」なんて平然と言いきってみせる柚陽は、厄介だけど、まだ「なにをしそうか」っていう、だいたいの想像が付く。
でも無自覚に「月藤に近付く人間は許せない」って言って動いてるのは、何をしでかすか分からない。現に昨日紗夏と港 がしていたことを把握していたんだし。ストーカー、なんて文字が思わずよぎってしまって、陸斗は振り払う。
「喫茶店で話したりしてる仲だから、そーいう話にならねーの?」
「ほんと迷子のトコを案内したくらいの仲っすから」
「そっか。アイツ、オレにはそういう話を一切しないから心配でさ」
「隼也に心配を掛けたくないんじゃねぇっすか?」
「そうだったら良いんだけど。月藤本人は口うるさいだけ、なんて思ってるかもなぁ」
はは、なんて小さく苦笑を浮かべているけれど、目は全然笑ってない。ここで「なにか相談された」なんて言おうものなら、掴みかかって殴ってきそうだ。
どんな感情を堪えているのかは定かでないけれど、なにかを堪えるように握り締められる拳が、陸斗の発言次第では、いつ陸斗の頬を捉えてもおかしくない。
「そうっすかねぇ」とか「だとしてもそういう年頃だからっすよ」なんて適当な相槌を、どうにかこうにか返した。
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