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ソレだって、陸斗 は忘れたワケじゃない。港 たちに怯えて、それでも陸斗に幸せかと問い掛けて。あんなに怯えきっていたのに。それが幸せじゃないことなんて明らかなのに、「柚陽 と一緒にいる」なんて言って。
あんな海里 は、もう見たくない。オレの幸せなんて、そこまでして願うもんじゃねぇんすよ。「不幸になれ」くらい、言って良いくらいなんだ。
「アイツの幸せを考えるなら、そんな無謀な事はすんなって。ソレがお前にできることで、お前がすべき事なんだよ」
「……それは港だって一緒っすよ」
「は? 嫌味かよ」
ははっ。そんな風に港は笑った。どこか疲れていて、乾いた笑い声。
そりゃあそうだろう。この状況で明るく笑えるような神経を港は持っていないし、「親友に怯えられてしまった」というのは、きっと、陸斗では想像さえできないくらいに辛い事だろうから。
そんな港に、一応は怯えられていなかった陸斗が「港だって一緒だ」なんて言えば、そう返ってきても仕方ない。
あくまで冗談っぽい言い方ではあったけど。でもそこに、1割の本音も混じっていないなんて、言えないだろう。
それでも、「そんなんじゃないっすよ」陸斗は言葉を続けた。
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