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「幼馴染だか、親友だか知らないっすけどね!? それ以上海里(かいり)をバカにするようなら、オレも許さないっすよ」 「……バカになんて、してねーよ」 「してるっす。自分なら海里が傷付かない、みたいな言い方、海里への侮辱っすよ。海里は色恋沙汰だけを優先する子でも、色恋沙汰だけを大事にする子でもない。友人みんなが大事で、順位付けなんてしないけど、それでもやっぱ、どっか特別なとこにいるアンタ等のこと、めちゃくちゃ大好きで大切に決まってるじゃねぇっすか」  自分が言えた立場ではないことを思い出し、殴ってしまった謝罪が出てきたのは、感情のままに言い放ってからだった。  気まずくて思わず逃げるように目を伏せてしまう。それでもなんとか、「殴って悪かったっす」その謝罪と、 「……まあ、オレが言えたことじゃないんすけどね」  その言葉だけは、はっきりと告げて。 「でも、本音っすよ。海里のことを大切に思ってんなら、自分のことも大切にしろよ、バカ(みなと)」  頬をおさえたまま、まだどこか、きょとんとしていた港は、そのあとでぷっと吹き出した。 「お前に言われるとは思わなかったし、大切にしろーって言いながら殴られるって斬新だな」 「ほんと、それは悪かったっす」 「いや、いいよ。お前の言うことももっともだし、気にしてない」  ははっ、脱力して、港はそんな風に笑った。  遅れて罪悪感に襲われた陸斗(りくと)が、さぞ滑稽に映ったのか、「おもしれー顔」なんて、さらに笑い声を高めて。  それから急にチャンネルが切り替わったように、「はあ」深い息を1つ、漏らした。 「分かった。無茶はしねーよ。だけど、隼也(しゅんや)の様子を伺うために接触も続ける。紗夏(さな)との約束に必要そうなら、だけどな」

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