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本人は今の今まで恋心を自覚していなかったみたいだけど。
それでも「アイツの件があるから」「アイツと引き離さないと」って柚陽 と紗夏 を引き離すのに必死になってたし、しまいには「大学生ってだけで警戒対象」とまで言い切った。それは「大学生」って言うより、「柚陽と同年代」っていう意味だろうけど。
確かに「壊すのが愛」と言い張る人間に「壊されたい」なんて、自分の知人が熱を上げていれば、心配にもなるだろう。「嫌われたって良い」って、引き離そうとするかもしれない。
だけど隼也 の行動は、どっか異常にも思えて。
いつからなのか。どの程度なのか。そういうのを知らずにいるのは、危ない気がした。
もちろん隼也本人には聞けない。だからと言って当事者、ある意味では「被害者」であるかもしれない紗夏に聞くのも、「正しい」なんて言えないっすけど。
「そうですね。徐々に徐々に悪化していきますが、隼也さんは基本的に、オレに対してだけ、過保護です。それはもう、昔から。あの人、顔に見合わず独占欲が強いんですよ」
あはは、なんて軽やかに苦笑を浮かべているのが、電話の向こうから聞こえる。声には「やれやれ」といった意味合いの響きしか感じられなくて、それが強がりなのか、本音なのか陸斗には分からない。
紗夏の性癖を考えれば「案外平気なんじゃないの?」と思えるようなことかもしれないけど、紗夏も、あの柚陽でさえも、あくまで対象は「好きな人」だけなんだ。だから柚陽としばらく“付き合っていた”陸斗が、今もこうして無傷であるワケで。
「でもまあ、ひどくなったのはオレが柚くんを好きになってからなんで、半分は自業自得でしょうか? オレの性癖って理解されにくいですし、そりゃあ、お兄ちゃんぶりたい隼也さんはなおさら心配しますよね。今の今まで真っ直ぐな目で、「恋情なんて抱いてない」って言いきっていたので、意味が分からなくて。隼也さんには応えられませんけど、はっきり言ってもらえて、少しだけ安心したくらいです」
「……嫌なこと思い出させたっすね。ごめん」
やっぱり怖さとか、不快感はゼロじゃなかっただろう。そうした記憶をわざわざ引っ張り出してきて話すっていうのは、誰だって気持ちの良い物ではない。
だから陸斗としては当然の謝罪を告げたのだが、返ってきたのは「信じられない」と言わんばかりに、大きく息を飲む音。
「オレ、また何かしでかしたっすかね?」それが怖くなって、恐る恐る、「変なこと言ったっすか?」そう問い掛ければ、「いいえ」と、少し食い気味の返事が返ってきた。
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