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「……来てくれたんだ。面倒かけちまって悪いな、陸斗 。多分港 に悪気はないだろうから、怒らないでやってくれ。うっとうしいって思われるべきはオレだからさ」
ゆっくりとドアを見つめた海里 が、陸斗に気付いた。「う」思わず、そんな間抜けな声が漏れる。違うだろ、オレ。もっと他に言うコトがある。謝らないと。怪我のことも控えめに聞かないと。謝らないと、謝らないと。
そうは思っていても、なかなか声が出てきてくれない。唇が貼り付いていて、喉につかえてるものがあって。
間抜けな声をあげたり、ぼーっと立ち尽くしている場合じゃないっていうのに。
「……いや、アンタが、海里が謝ることじゃないっすよ。アンタはなにも悪いことしてねぇし、オレは港から聞いて……んな資格はねぇけど、海里が、心配で」
結局出てきた言葉は支離滅裂で、自分でも呆れてしまう。「何言ってるんだ」そう怒られても不思議はないし、当然なのに。
海里は、小さく微笑んだ。
情けない陸斗をあざ笑うんじゃなくて、微笑ましく思うような。……図々しいにもほどがあるけど、恋人として一緒に過ごしてた時。まだ空斗 が来る前。そんな時によく見せてくれた微笑みに似てる。
なんで。なんで、そんな顔。
陸斗のそんな混乱さえ見通したように、海里は微笑む。
「だから陸斗はなにも気にしなくて良いんだよ。お前の気が済むようにすれば良い。お前が幸せになってくれれば、オレはそれで良いんだからさ」
「でも、でも、アンタ……」
言葉が出てこない。そんな陸斗を見つめながら海里は、やわらかく微笑んでいる。ああ、いっそ責めてくれれば良いのに、なんて、それは甘えっすねぇ。
自嘲的な苦笑が1つ、思わず浮かんだ。
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