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「本当気にしなくて良いって。オレは陸斗 を責めるつもり、ねぇし」
微笑んで言う海里 は、多分本音だと思う。そう思うのは図々しいけれど、本当にオレのことを恨んでなんてなくて。ああ、恨んでくれれば良いのに、なんて、思っちゃいけないんすけど。
海里の言葉になにも応えられない陸斗に、さっきまで悔し気な顔で伏し目がちになっていた港 が気まずそうな表情を浮かべつつ、「悪い」なんて、なにに対する謝罪か分からない言葉を1つ漏らした。
「ほんと悪い。つい気が動転してた。お前呼ぶにしてももっと気を付ければ……」
ぼそぼそと呟くような言い方に、陸斗は思わず苦笑を浮かべる。港が謝ることでもないだろうに。
海里の前っていうのもあるだろうけど、港のこの態度には少し調子が狂わされてしまう。
「いや、それは構わないっすよ。海里には申し訳ねぇっすけど……。オレ、外にいた方が良いっすかね?」
海里を怯えさせたり、変に気を遣わせるのは陸斗にとっても本意じゃない。少し声を抑えてそう言ったのだけれど、海里には聞こえてしまっていたらしい。
小さく苦笑を浮かべた。
「確かにな。オレと一緒じゃ、陸斗も嫌だろ。悪かったな、迷惑かけちまって」
「そんなコトねぇっすよ。……いや、アンタには本当申し訳ないって思ってる。いくら償っても償えないって分かってるんすけど。……その、資格はねぇけど、アンタのことが心配、で」
思わず目が泳いでしまう。言葉も上手く出てこない。
切羽詰まっての電話は海里関係で、真新しい白い包帯と、濃い消毒液のにおいが他でもない答えだ。そして、だからこそ、詳しい事なんて聞けない。まさか、海里本人の前で、なんて。
海里は途切れ途切れの陸斗の言葉に、くすくすと微笑んだ。そっと指先で自分の腕を撫でる。
慎重に確かめるような触れ方だったから、やっぱり腕はまだまだ痛むのだろうけど。それこそ、少しでも力加減を間違えれば、分かりやすく顔が歪んでしまうくらいには。
それでも平然と微笑んで、海里は言葉を続ける。
「港がこのケガのことで、大げさに伝えたんだろ? 大した事ねぇ、って言ったんだけどな」
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