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それで崩れていくんすかね? 14 | 夜煎炉の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
それで崩れていくんすかね?
14
作者:
夜煎炉
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14
陸斗
(
りくと
)
がそんな風に情けなく発した言葉に、
海里
(
かいり
)
の微笑みが崩れた。 目が驚きでいっぱいに見開かれて、「信じられない」と言わんばかりにマジマジと陸斗を凝視する。そりゃあ、あんな事をした人間が「幸せにしたい」だなんて、嘘かなんかだと思うだろう。信じたとしても「どのツラ下げて」と反感を買って当然だ。 ただ、海里のその顔は、そうした不快な「信じられない」ではなくて、もっと違う、ああでもコレって自惚れっすかね。それとも都合の良い夢? だとしたらそっちの方が良いかも。だって海里の腕も、夢になる。 そんな風に混乱する陸斗の前で、海里はぽろっ、涙を1つ零した。 それが切っ掛けになったのか、次々に海里の目から涙が零れては、頬を伝って落ちる。シーツに。布団に。海里の手に。 糾弾や軽蔑こそ覚悟していたけれど、泣かれるというのは覚悟も予想もしていなかった。己の浅はかさを恨みつつ、陸斗は必死でなにか言おうと口を開きながら、言葉を探す。オレが泣かせたのだから、オレがなにを言っても無意味、逆効果かもしれないとは不安に思いつつ。 「その、えっと、ごめんなさい。いや、謝って済む問題じゃ、ねぇんすけど、でも、やっぱ今のは、その」 だけど言葉は出てこない。出ては来るけれど、それは「言葉」とはお世辞にも言えない、拙いもの。 支離滅裂で。情けなくて。それでも何か言おうとする陸斗を、「違う」海里の、震えた涙声が遮った。 「違うんだよ、陸斗。まだお前にそう言ってもらえるのが、嬉しかったんだ」 許された気がした。なんて、微塵も思っていない。 海里はやさしい。だから、陸斗に気を遣った可能性だって十分にある。 だけど、それでも。 涙を流しながら海里が浮かべた、明るくて、やわらかい微笑みに。 ああ、まだオレはこの微笑みを見る事を許されていたのか。なんて。この微笑みを今度こそは絶対に守らなきゃなんて。 痛いほど、強く、陸斗は自分の中に、それを刻み込んだ。
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