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それで崩れていくんすかね? 2 | 夜煎炉の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
それで崩れていくんすかね?
2
作者:
夜煎炉
ビューワー設定
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2
柚陽
(
ゆずひ
)
は変わらずくすくすと笑う。笑いながら、あの不快感に満ちた見下す視線で
隼也
(
しゅんや
)
を見つめる。 単純な身長の問題では、どうやったって柚陽の方が低い。柚陽が隼也を見下ろすのであれば、それなりの踏み台が必要だろう。しかしお互い同じ地面を踏みしめながら、間違いなく現状、相手を見下ろしているのは柚陽の方だ。 にたぁ、なんて。 口の端を思いきり持ち上げて、柚陽は嫌な笑いを浮かべた。いつも貼り付けている無邪気さは、隼也を前にすると剥がれがちではあるものの、今回はその非ではない。と言うか、そうした類でもなくて、あえて浮かべた「勝ち誇った顔」といったところか。 そんな笑顔のままに、柚陽は堂々と、 「1番おかしいのが、お前ってことだよ」 そう言い放った。 直後訪れたのは怒声でも、刃物を振るう音でもない。幸い、隼也が柚陽を刺す音でもなかった。 ただ、耳に痛いほどの沈黙。 隼也は怒りを湛えた目のまま、ぼうぜんと柚陽を見つめている。まるで「なにを言われたのか分からない」と言うように。事実なにを言われたのか分かっていないのだろう。人間、自分の許容量を超えると、フリーズするもんすからねぇ。 それでも数秒の沈黙を経て、柚陽に投げ付けられた言葉を咀嚼し、飲み込んだらしい隼也は、分かりやすく激昂した。 「テメェにだけは言われたくねぇよ!!! このクソ犯罪者が!!」 「うわ、それお前が言っちゃう? お前が1番、最低なのに?」 こてん。こんな状況にも拘わらず、柚陽はいつも通り、自分の首を倒して問い掛ける。 柚陽の恋愛観なんて、陸斗には理解できないし、理解したくない。壊すべきは好きな人を邪魔するナニカだ。好きだから壊すなんて、分からない。 それでも、それでも柚陽が隼也を軽蔑する理由だけは、なんとなく、分かった気がした。 陸斗は自分の大切な人のため、邪魔な物を壊す。それがたとえ人間であろうと、陸斗が“そう”と判断すれば、ゴミかなにかにしか映らない。 柚陽はそれが愛のカタチだと疑わず、愛を示すために、愛情表現として好きな人を壊す。対して
紗夏
(
さな
)
にとっての愛は、ソレを受け入れることだ。大好きな人に壊されることこそ紗夏の幸せで、紗夏はそれを愛情だと受け取っている。半分は柚陽の影響だって言ってたけど。
港
(
みなと
)
が大切な人の言葉を、自分の感情さえ抑えて従うように。 ……自分で言うのもなんすけど、海里がオレの幸せのために自分を犠牲にしようとしたように。 結局、オレ達はそれぞれが結構違ってるけど、少なからず自分の主張する愛の下に何かを壊したんだ。だけど、隼也は。 紗夏の想いさえ否定して、捻じ曲げようとしているんだ。
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夜煎炉
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