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「ごめんね、責めるつもりはないんだ。海里 は賢いから、精一杯世間一般を学んだ。多分傍目に見てれば、その成果はあると思うよ。少なくとも空斗 が来るまで、陸斗 くんだって違和感を抱かなかったでしょ」
「……そっすね」
ガキが嫌いで、海里以外に興味がない。そうした嫉妬心が多かったけれど、あの時の海里はやはり今思い返しても、少しおかしく映る。
今なら理由も分かるから納得してるけど、「他人の子になんでそこまで」って、怒りさえ抱いていた。
浮かべる微笑みを苦笑へと変えて、波流希 は言葉を続ける。「でもね」と、陸斗をまっすぐに見つめながら。
「海里は結構モテるんだけど、陸斗くんに会うまで人を好きになったことがないんだ」
「……は?」
いやいや、あの人好きで友人からも慕われる海里が? 驚いて思わず間抜けな声で問い返せば、「ああ、違う違う」波流希は否定の言葉を紡いだ。
「好きになったとは思うよ。港 のこと、自分で言うのはなんだけど、オレのこと。そして他の友人たちのこと。でもね、恋愛感情を向けたのは陸斗くんが初めて」
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