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「そういう風な感情を向けられるのが好きなら、なんでオレの事はあんな風に拒んだんだろうな、って。変なヤツと付き合ってるから、おかしくなっちまったのかもしれないけど」
どうやら、紗夏 に対しての「分からない」だったらしい。当人同士ではないが、その答えだって簡単じゃないか。“そういうところ”だ。
だから紗夏は隼也 を好きにならないどころか、嫌いになっていくというのに。本人はそれに気付かないで、ますます紗夏を縛ろうとするんだから。
絵に描いたような悪循環だ。そしてここまで盲目的に「自分に非がない」「周りが悪い」と想っている隼也に対して、もはや呆れるではなく、同情するべきなのかもしれない。
「隼也が嫌な理由は、そこっすよ。紗夏は誰彼構わず虐げられたいワケではないし、愛ゆえに刃物を振るうんだと思ってる。関係ない人間に向けちまうのは紗夏には理解できないし、そうやって束縛されるのも好きじゃないのかもしれないっす。あと、少しは隼也にも理解しようとして欲しかったのかもしれないし」
紗夏の気持ちは、紗夏にしか分からない。
だから結局は憶測に過ぎないものの、そう告げて、頼んでおいたサンドイッチに口を付ける。
隼也の反応を確かめながらサンドイッチを噛みしめる。やっぱり味はよく分からない。店に申し訳ない気持ちになりながら、なんとか飲み込んだ。
けれど。
「本当、まるで分からないんだよなぁ。ちょっとは分かるかと思った。月藤 の気持ちが、こっちを向くかとも期待した。だから月藤を刺してみたけど、まるで分からねーんだ」
その言葉に、飲み込んだ感覚さえなくなった。代わりにしたのは、すとん、と、体の何もかもが落下していく様な不快な感覚。
頭が真っ白になった、なんて事さえ自覚するより先に、「は?」陸斗 の口からその音が漏れた。
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