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それで崩れていくんすかね? 2 | 夜煎炉の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
それで崩れていくんすかね?
2
作者:
夜煎炉
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2
陸斗
(
りくと
)
に対してだけ、「おバカさんなほどにやさしい」という
海里
(
かいり
)
。 精一杯「世間一般」であろうと必死になって、自分の両親みたくなりたくないと、陸斗にうんと愛を捧げてくれた。だからこそ陸斗に対してだけは「陸斗が幸せならなにをされても良い」なんて、そんな姿勢を崩さずにいた海里を教えてくれた、
波流希
(
はるき
)
の言葉を。 今痛いのは
紗夏
(
さな
)
のはずで。 傷付いたのは海里のはずで。 陸斗はそんな紗夏を、せめて
柚陽
(
ゆずひ
)
が戻ってくるまでの間、気を紛らわせるよう努めるべきだし、海里に対しては一生掛けても償うべきだ。 それでもずきりと痛んでしまう胸に、陸斗は苦笑を1つ漏らした。相変わらず情けないっすねぇ、なんて、自分で自分に呆れながら。 とは言えあまり黙り込んでいたら、紗夏にいらん誤解を与えてしまうだろう。少しでも紗夏の気を紛らわせようと会話しているのに、それで紗夏を傷付けてしまっては本末転倒だ。 柚陽のことは変わらず許せていないし、憎んでさえいるかもしれないけど、柚陽と同じようなことをしたことになってしまう。それも柚陽の場合は愛を抱いて、愛を捧げた結果なのに、こっちは己の無神経さで、というなんとも最低な理由で。 「あはは、海里は……オレに甘すぎるっすから」 頑張って浮かべた笑いは、情けないほどに乾いていた。 結局普通に笑うのは諦めて、まだどうにか上手く浮かべられそうな苦笑を貼り付け、頬を掻く。 心配になってちらっと窺った紗夏の顔には、ほっとしたような微笑みが、極々僅かにだけれど、添えられていた。それに陸斗も安心する。どうやら「成功」とまでは言わなくても、失敗はしなかったらしい。 「誰だって」。さっきまで恐怖や怯えだったり、無感情だったりが色濃く見えていたのと同じとは思えない、穏やかな光を湛えた眼差しで紗夏は切り出す。その目が一瞬遠くを、おそらく柚陽を見つめた。すぐに陸斗の方へと戻ったけれど。 「好きな人には甘くなってしまうものなんですよ」 「紗夏」 「オレだって、柚くんの願いならなんでも聞きたい。甘やかしたいって言うか、甘やかさせてほしいですもん」 「そっか」 「はい」と答えた海里の、穏やかで、あたたかな微笑みに、陸斗はどうにか同じような微笑みで応じる。応じながらも胸にはまるで、氷でできた刃が突き立てられたかのような。 冷たくて鋭い痛みを感じていた。
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