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「……ああ、クソアニキ気取り、って言ってもキミには誰のことか分からないか。でも、ごめんね。オレはアイツのことが嫌いだから、この話はここでおしまい。紗夏 本人が来ない理由も納得したから良いよー」
そうして、柚陽 は明るく笑う。それでも「クソアニキ気取り」……多分隼也 への怒りは消えていないらしくて、大きな目に苛立ちが宿っていた。
とは言えそれも、溜息を1つ吐いたあとには、大分薄らいでいたけれど。
柚陽は目線を陸斗 から外して、ぼ」やり、窓の外を見つめる。
普段でさえ柚陽の考えてることなんて分からないのに、記憶喪失、あるいは記憶に混濁がある今となっては、さっぱりだ。それでも紗夏を大切に思ってることくらいは、なんとか分かった。……もしかしたら、そう願ってるだけかもしれないっすけど。
「アンタと紗夏、仲良いんすか?」
「うーん、どうだろうねぇ。オレは今、紗夏との付き合い方について、悩んでるからさぁ」
「付き合い方に悩んでる?」
それは、友人関係から恋人関係に踏み込むにあたっての悩みなのか。それとも。
陸斗の悩みは悩みとしての輪郭を持つより先に、柚陽によって答えが提示された。少し気まずそうな苦笑が、もう十分に語っているようにも見えたけど。
「紗夏の顔見知りに言うのもアレだけどさぁ、オレは紗夏を代用品にしてるんだよねぇ……」
ただ以前「代用品」について語った時よりは、どことなく気まずそうで、話すのを躊躇ってるようにも見えた。
それは、「そうあってほしい」っていう気持ちが見せた、幻覚なんすかね? それとも柚陽の中で心境の変化というやつは、確かにあったんだろうか。
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