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 腹に、「熱い」と言った方が近いような痛みを感じながらも、陸斗(りくと)の視界は白い天井と、海里(かいり)の顔を映す。少し視界がぼんやりとして、輪郭が定まらないのは何故だろう。思わずそう考えて、ああ、さっきの記憶を思い出す。  「さっき」って言っても、実際には大分時間が立っているのかもしれない。陸斗にとっての「つい最近」の記憶である海里より、ぼやけた視界でも分かるくらいには、少しは体調も回復している様に見える。顔色は悪そうだし、目は真っ赤に晴れていて、目の下にうっすらとクマも見えるけど。  ……つーかこの顔色はオレのせいっすか? 思わず苦笑を浮かべようとして、なんか引きつるものを感じたから諦める。 「陸斗、お前、本当、本当……なにして、バカ……」  陸斗を見つめる海里の目が驚きに見開かれて、ぽろぽろ涙が零れてくる。その涙が陸斗の頬に落ちて、伝う。  視界の、本当に端っこで(みなと)波流希(はるき)と思える人影が忙しく動いているのが見えた。ナースコールらしきものを押して、なにやら伝える声が聞こえるけど、詳しくは聞き取れない。  ぽろぽろ涙を零す海里の頬を撫でたいんだけど、涙を拭いたいんだけど、手が上がらないっすねぇ。せめて大丈夫っすよ、って伝えたいんだけど、口も満足に動かなそうだ。 「かいり……、なかないで、ほしい、っすわ」 「バカ! 無理だっつーの、本当、もう……陸斗の、陸斗のバカ……」  賢いはずなのに、海里はただただ「バカ」しか言えなくなってる。あーあ、海里のこと、もう泣かせたくないんすけど。  慌てたように部屋、多分病室にやってきた医者の姿を見てから、陸斗は再度意識を失った。

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