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「その場でやりやった、とかもなくて、でもまだ隼也 は紗夏 の事を諦めちゃいないみたいでさ。退院して間もないし、記憶も混濁気味、しかも紗夏が一緒ってだけあって柚陽 は目立った反論もしなかったらしいけど、そんな柚陽相手でも、覚悟しておけ、みたいな捨て台詞を残して帰ったんだと」
「そっすか。……厄介っすねぇ」
いい加減、凝りてくれれば良いのだけれど。せめて自分のしていることが「おかしい」と気付いてほしい。
紗夏の付き合いまで管理するのは、おかしい。ただの束縛、いや、それ以上だろうか。
……柚陽も柚陽でタイガイっすけど。でも紗夏の傍にいて安全なのは間違いなく柚陽の方だ。
「で、アイツ等からの伝言だ。特に陸斗 。十分気を付けておけ、だってさ」
言いながら港 の目線が落ちる。どこを見ているかは分かった。陸斗の腹部。刺されて、真新しい手術痕の残る場所だ。
海里はまっすぐに陸斗の目を見て、心配そうにしている。陸斗の発言1つで泣き出しそうだし、怒りそうでもあった。
なんとなく気まずさを感じて頬を掻く。心配されているのは、くすぐったいし、いまだ燻る罪悪感がじくじくと増していく。
「大丈夫っすよ。んな2度も3度もヘマはしないし」
「……あんま危険には突っ込まなないで欲しいんだけど」
「大丈夫。海里を泣かせるようなことはもうしないっす」
「とかなんとか言って。つい最近、お前、泣かせたからな?」
「港!! なにバラしてるんだよ!?」
きっとこんな場合じゃない。きっとまだまだ、オレには「こうしている」資格はない。思いつつも陸斗は、海里と港がしてるように笑みを浮かべた。
海里を泣かせたくなんてないし、それなら少しくらいは、「こうして」いないと。
そんな考えもあったけれど、やっぱり、こんな風に海里と過ごせるのは楽しいっていうのも、陸斗の中にはあった。
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