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思わず電話をかけ直すものの、無機質な電子音声が電源が切られていることを告げるだけ。焦りからケータイを握る手に力が籠る。やはり柚陽 に伝えるのは失敗だっただろうか。
柚陽がなにをしようとしているかまでは分からない。それでも想像くらいはできる。なんせ、あの信念を捨てて「復讐をする」と言ったのを見ている。そんな柚陽にこの話をすればどうなるか。……先に考えるべきだった。
もちろん紗夏 を守るためであれば柚陽に伝えるのが1番だろう。でも、ソレを伝えれば柚陽がどうするかなんて。思わず親指の爪を噛み締めた。陸斗 の目が剣呑なものになる。
「紗夏。ごめん、ごめんね、紗夏」
柚陽が傷付けば紗夏がどうなるかなんて、想像に難くないだろう。自分の手で紗夏を壊さなかったところで、紗夏を傷付けることに変わりない。オレはどうしてこうなんすかね。
せめて柚陽がなにか行動を起こしてしまう前にと、震える手で自分のケータイをタップする。連絡先にいまだ残してある、隼也の番号。
「……悪かったっすわ、柚陽」
オレが連絡して、何になるんすか。下手に刺激したら海里 を傷付けるだけかもしれないんだ。それだけは避けないといけないのに。
第一紗夏なんて付き合いが短い。今までならどうなっても気にしなかっただろ。そもそも柚陽に至っては、全てを崩した原因じゃないか。
そうした感情が渦巻く。渦巻くけれど、手を止める理由には成り得ない。
話が通じない隼也相手に「話し合い」なんて出来るとは思っていないが、それでもと隼也の連絡先に指先が触れようとした、まさにその瞬間だった。
手の中のケータイが着信を伝えて震え、思わず弾みで取り落とす。ベッドの上にぼふっ、やわらかい音を立ててケータイが落ちた。
もしかして隼也からじゃ。思いながらそっと拾い上げたケータイの液晶画面には、「港」の表示。
今の陸斗を港 が見ていたワケでもないのに、なんとなく気まずさを感じながらも陸斗は震えの残る指で通話をタップした。
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