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「さすがに、お前のこと、すんなりは許せないけどさ。でも海里(かいり)はお前が良いって言ったんだ。あまりうじうじしてたら、海里にも失礼だぞ?」 「うじうじ、って……」  あまりな言い方に思わず苦笑が漏れる。遅れて「確かにその通りっすね」なんて思いはしたけれど。もしかしたら(みなと)なりに陸斗(りくと)を励ましてくれたのかもしれない。  「ありがと」と、小さく告げた礼は届いているだろうか。 「まあ、お前も気を付けろよ。なにかあったり、隼也(しゅんや)が変わった動きをしたらオレ等に頼れって。オレじゃ頼りないなら、先輩でも良いし」 「ははっ、港も十分すぎるくらい、頼りになるっすよ」  それは嫌味でもお世辞でもなく陸斗の本音だ。港にも波流希(はるき)にも陸斗は救われている。相変わらずそれを素直には受け止められなくて、「オレは責められるべきなのに」って気持ちは消えていないけれど。  そして港は、そんな陸斗の内心なんて、もはや「お見通し」と言うよりは「慣れた」のだろう。  「あー、そうそう」なんて切り出した声は、この状況に似合わないほどに明るかった。 「オレ等に悪いから。頼る資格なんてないから。なんて思ってるなら、間違いだぜ? 罪悪感が微塵でもあるなら、むしろ頼れって」 「……ん、お言葉に甘えるっすわ」 「くれぐれも気を付けろよ」  最後にまた、真剣な声音に戻って念押す港に、陸斗は、ゆるりと微笑みかける。電話越しで表情は伝わらないだろうけど、電話越しの声だけであっても、些細な感情の動きは、案外伝わるものだと最近分かったというのもあるし、純粋に港たちに救われたから、というのもあるのだろう。  小さくではあるが微笑みかけたまま、「港たちも」。声音は真剣な物で返して、そこで電話は切れた。あとには無機質な電子音が届くばかり。  この直後、隼也に連絡を取れるほど、今の陸斗は図太くない。ケータイを枕元に放って、自分もそっとベッドに横になる。  傷口は回復しつつあると言っても、まだ勢いよくベッドに寝転べるほどじゃない。  指先だけでそっと傷口の近くを窺うように触れて、陸斗は呟いた。 「海里にも、紗夏(さな)にも。港と波流希、空斗(そらと)。……それから柚陽も、っすね。なにもありませんように」  呟いて、「自分でまいた種なのに」とか「ちょっと女々しいっすねぇ」とか。そんな自嘲を浮かべた。

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