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なんで、なんで海里 のケータイから、よりによって隼也 から電話が掛かってくるのだろう。ケータイを持つ手がかたかたと小刻みに震え、口の中から水分が抜けていく。息が出来ない。
ぜぇ、ぜぇと途切れがちの息を漏らしながら、どうにかこうにか意識を留めようと必死になる。そうでもしないと気を失ってしまいそうだ。グッ、力強くケータイを握り締めた。
「なんで、なんで、なんでなんで、なんでアンタが、海里のケータイ……」
「まったく、性格悪いぞ? 退院してから、なんて言っておきながら。月藤 が見舞いにくるような仲なら、壊すくらい簡単だっただろ?」
「いや、だから…………つーか、そもそも、腹の傷も出来ない原因だって言ったじゃねぇっすか」
動揺してたらいけない。自分に言い聞かせながら応じるものの、声は分かりやすく震えている。
どれだけ冷静さを失っていたとしても、明らかに動揺しきっているのが、隼也にも伝わってるだろう。
「柚陽 は帰ってきてくれる。紗夏 も思いつめないで。そんな事言っておきながら、壊す気があるとは思えねぇけど?」
「アンタ、まさか盗聴して」
ここはしらばっくれるべきだったかもしれない。それでも驚愕が先に来て、思わずそう漏らしていた。こんなの図星だって言っているもんじゃないか。
けれど隼也の反応はあっさりしていた。けろっとして。
「いや、お前じゃねぇよ。アイツの人付き合いが心配だからさ、月藤の様子を窺ってるんだ」
「紗夏を盗聴してた、って?」
「まあ、平たく言えば」
文字通りあっけらかんと隼也は伝える。「その何が悪いんだ?」と言わんばかりに。
……これは、もしかしたらずっと前から盗聴器を仕掛けていたかも、しれない。隼也のあまりに歪んだ思考と、今までの会話を思い起こして、陸斗の背中を更に冷たい汗が伝う。
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