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少年を送り出したあと、しばらくしてから、また、病室の扉が遠慮がちに叩かれた。病院である事を考えれば仕方ないと言うか、当然なのかもしれないけれど、ここまで気を遣わなくても良いのに、と陸斗 としては思わないでもない。
オレしかいないんだからなおさら、気にしなくて良いのに。それとも個室だから緊張するんすかね?
思いながら「どうぞー」と軽く応じれば、ノックと同じように、遠慮がちに扉が開かれた。
「ああ、港 。今日も来てくれたんすね」
「おう。どうだ、調子は」
「まあまあっすよ。そりゃあ入院中なんだから良くはない、でも悪いって言うほどでもない、って感じっすね。ああ、でも」
港は毎日顔を出してくれている。そんな毎日来なくてもとは思うけれど、病院自体には来ているから変わりないらしい。
本当は海里 の病室に痛いんじゃないかと陸斗は思うけれど、「ちょっとアレ以来気まずくてな」と苦笑交じりに言われてしまって、陸斗は詳しいことを聞けなかった。なんせ陸斗は記憶がおぼろげだし、でも「事故」から陸斗と海里を助けてくれたのは海里だったと聞かされれば、彼にも彼で複雑なものがあったんだろうというのは、容易に悟れる。
……あまりその辺のことは考えたくないっていうか、考えられないんすけど。
「なんかあったのか!?」
思わず呟いた言葉に、勢い込んで訊ねられて、陸斗は思わず口を閉じる。
自分自身、言おうかどうか迷っていたところだ。下手に言って心配を掛けてしまっても申し訳ないし、かと言って、引っかかる事があるのなら聞いておいた方が良いのかもしれない。
そんな風に陸斗が悩んでいる間も、「おい! おいって!!」と声を掛けてくる港を、申し訳ないけれど数瞬スルーさせてもらって、思案する。正確に言えば、しようとした。
反応のなかった陸斗を「何かあったのか」と心配したんだろう、ナースコールに手を伸ばすのが見えて、「あー、待って!!」慌てて声をあげる。
「たいした話じゃないかもしんないから、これ以上アンタの心労を増やしたくなかったんすよ。だから話すべきかどうか、悩んでた、っていうか」
「悩んだなら言えよ。割とオレはお前のことも気にしてるし」
「あはは、ありがとう。実はさっき、お見舞いに来てくれたコがいたんすよ」
ここまで言われてしまえば、隠しておく理由もないだろうと、陸斗は切り出した。陸斗としては軽い調子で言ったのだけれど、ほんの少し港の顔に複雑な色が差すのが見えた。……なにか、問題あったんすかね?
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