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「……それなりに知ってる、ってだけだから、そこまで詳しく知ってるワケじゃねぇよ? でも、まあ、そんなオレから見ても、大丈夫とは言いにくい状態だ」
そこは嘘でも「大丈夫だった」「少しは元気になってた」とでも言うものなのかもしれない。けれど港 の性格を考えれば器用な嘘をつける方ではないだろうし、今陸斗 が欲しているのは「安堵」ではなく「真相」だ。
下手に嘘をつかれて取り繕われるより、多少傷付く結果でも事実を語られた方がよっぽど良い。
それでも、港の言葉に多少の落胆は感じずにいられなかったけれど。「そうっすか」。漏れた声は思ったのの数倍、寂しそうだった。
「あ、誤解しないでほしいっすけど。オレの態度が落ち込みきってるように見えたからって、「嘘つけば良かった」とか思わないでね? 落ち込んでないって言えないけど、それは誰のせいでもないし、オレは真実が知りたかったんで」
「……はっ、やっぱ陸斗は陸斗だな」
「そりゃあ、まあ、記憶のほとんどをなくした、ってワケではないっすからね」
なくした記憶について思い出そうとすると、あちこちが痛くなる。それでもなくした記憶は本当に極1部で、人格形成に支障が出るほどじゃない。
港がさっきと同じ言葉を発した。さっきと違って、こっちは素直にすんなり納得できる。
果たして陸斗が繕った甲斐があったようで、港まで極端に落ち込ませることは避けられたようだ。普段より弱々しいながらも、確かな笑い声を聞けて、陸斗は安心する。
でも、安心しきってもいられない。「大丈夫とは言いにくい」っていうのは、ベストな状態とはほど遠いだろう。
「危険」と言うほどでもない、って感じなだけで。
「なんとかしてあの子に、アンタに原因はないし、気にすることじゃない、って伝えたいんすけどねぇ……」
「……それは正直、難しいと思うぞ」
方法はないものかと考え込む陸斗に、少しためらってから、港はそう切り出した。
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