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一瞬迷いながらも、ゆっくりと確実に頷いた港 を見て、陸斗 は小さく息を吐きだした。相変わらず腹は痛い。じくじく、ずくずくとした痛みは、まるで再度刺されて、抉られて、膿んでいるみたいだ。
もちろん、それは錯覚だから、実際は傷口が開いてさえいないんだけど。
「本当はオレも気を付けたいんだけど、港、頼んでも良いっすか? その隼也 ってヤツから、海里 のことを守ってほしいんす。今のオレじゃ、なんも出来ないから」
本当は今度こそ海里を自分で守りたい。でも今の自分が海里を守ろうとしたって、足手まといになるだけだ。それで海里が余計に傷付くなんてこと、あって良いはずがないじゃないか。
なんつーか、本当我ながら情けないっすねぇ。呆れと自己嫌悪に襲われながら目を伏せていた。
港がぎこちなく陸斗の頭を撫でた。躊躇いながら、ゆっくりと。オレの心情でも見透かされたんすかねぇ。
余計な情けなさや申し訳なさと戸惑いを感じながらも顔を上げた陸斗に、港は照れくさそうに顔を逸らした。片手が照れくさそうに頬を掻く。
「あー、なんつーか、その、だな? 別にお前は悪くないし、今のお前の気持ちは分かってるよ。けどオレだってお前に無理はさせたくねぇし、海里だってお前に無理をさせたくはないだろ」
「あはは、ありがと。でも、アンタから頭を撫でられるとは思わなかったっすわ」
撫でられるというのは結構照れくさいし、照れくさそうにしている港を見ると、こっちも照れてくる。
照れ笑いで言えば、港もますます頬を赤らめた。あああ、やめて、港。思いっきり釣られるし、くすぐったいっすわ。
「あと、コレはだな……。ほら、背の高い人間は撫でられ慣れてないから云々、って言うだろ? まあ、お前は恋人と一緒に暮らしているワケだから、そーいう機会もあっただろうけど」
確かにあった。海里に撫でられたことも、港は濁したけれど、柚陽 と暮らしていた間も。
だけど、「それはそれ」というヤツだ。背の高さにしては撫でられ慣れているかもしれないけれど、港がそうしてくれるのとは別、というか。
素直にその気遣いが嬉しいのだ。陸斗はそっと首を振って微笑む。
「機会はあったっすけど、やっぱ、こーいうの違うっすよ。アンタがこうやってくれたことが、嬉しいっすわ」
「止めろって。なんか、照れるわ」
言ってますます顔を赤くする港のそれが移るのを感じながら、「どうかまた」そんな願いが胸に広がる。
また、こうして普通に笑いあえる日が訪れれば良い、と。
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