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それで崩れていくんすかね? 7 | 夜煎炉の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
それで崩れていくんすかね?
7
作者:
夜煎炉
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7
柚陽
(
ゆずひ
)
のことは大体覚えている。記憶があやふたになってしまっている以上、「大体」なのか「全部」なのか、実はコレさえ「極1部」なのか正確には分からないけれど。でもまあ、アレも覚えている以上は「大体」か「全部」かで問題はなさそうだけれど。 そんな柚陽のことを、
陸斗
(
りくと
)
としては確かに、「自業自得っすよね」なんて思う反面、恨みが絶無だとは言えない。 ただ、柚陽のした事を考えた上でも、 「少なくとも
隼也
(
しゅんや
)
に関しては、アンタが嘘言ってるとは思わないんすわ。……いや、ちょっと違うかなぁ」 隼也。呼ぶ度に歪んだ顔に柚陽は苦笑した。 「別に無理して名前呼ばなくて良いよ。オレだって聞きたい名前じゃないもん」 「あー、受け止めなきゃ、とは思ってるんすけどねぇ。情けないけど、今はお言葉に甘えておくっすわ」 「うん、そうしてそうして」 「で、ソイツの事についてはアンタ、嘘言わないと思うんすわ。いや、違うかな。アンタ、
紗夏
(
さな
)
くんのことに関しては正直だと思うんす」 柚陽の顔に浮かぶ感情が、一瞬だけ単純なものになった。「驚き」だけに。 でもすぐに、余裕そうな微笑みと、大きな目には恨みや後悔や、そんなものをないまぜになせて。 それから、小さく頷いた。方向は縦に。 「紗夏はオレの大事な大事な代用品。もしかしたらもう、代用品、なんて言えないかもしれないなぁ。
海里
(
かいり
)
のためには捨てられなかった信条が、紗夏のこととなったら簡単にポイッって出来たもん。まあ、元からアイツが嫌いだったからかもしれないけど」 「なんつーか、アンタからそんな言葉聞けるとは思わなかったっすわ」 「えへへー、オレもびっくりだよぉ」 柚陽は、ヘラッと笑ってみせて、それからすぐに真面目な顔に転じた。 何かの覚悟を決めた目。まるで大きな瞳は、人を殺さんばかりの光を宿している。 「アイツはまだ、紗夏を狙ってる。りっくんと海里を巻き込んでも、まだ足りないみたい。もっともっと巻き込むかもしんない。それを見て紗夏が傷付くのも、嫌なんだよねぇ。紗夏を傷付けるのも、守るのもオレだけで良いもん。……だから、だから、りっくん、お願いだ」 ふわふわの髪が揺れる。柚陽が頭を下げたのだと、遅れて気付いた。 まさかそんな柚陽を見るなんて。マンションの件についても「愛だもん」なんて言いきっていたのに。 戸惑って言葉をなくす陸斗に構わず、柚陽は頭を下げたまま、「お願い」。再度、そう口にした。 「オレがもし、“オレとして”紗夏の前に戻ってこられなかったら、海里とりっくんに被害が及ばない程度で良い。オレの代わりに紗夏を守ってほしい。お願い、守ってください」
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