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不満そうではあるけれど、もう数押しで納得してくれそうな感じもする。「納得」と言うよりは「渋々折れてくれる」って言う方が近いかもだけど。
それでも紗夏 が紗夏を守ることを許してくれるのなら、それで良い。半ば強引かもしんないけど、ここは強引に押し通してでも守らせてもらわないと。少なくとも、隼也 との接触は防がないといけない。
そんな感情が分かりやすく表情に出ていたのか。
それとも、紗夏が人の心情を読み解くのに長けているのか。
陸斗 を見て、紗夏は首を傾げた。柚陽のクセを彷彿とさせる仕草。
陸斗を見つめる目は雄弁で、「どうして?」という疑問を語っている。
「どうして、陸斗さんはこんなにもオレのことを守ろうとするんですか? オレは海里 さんでもなければ、海里さんの友達でもない。むしろオレのせいで海里さんは理不尽な目に遭ったと言えます。なら、オレのことも恨めば良い。いいえ、あるいは柚くん以上にオレを恨むべきなのかもしれないです」
「どうして」と純粋な疑問を訴えながら、「恨まれたい」とどこかで望んでいる目は、陸斗にも覚えがあるものだ。
オレとおんなじっすね。裁かれることを甘えだと思って、でも、どこかで裁かれたいと思っている。相手に糾弾されて、「罪を償え」と罵詈雑言を叩きつけられることを望んでしまっているんだ。
もしかしたら、恨んだ方が紗夏は楽になるのかもしれない。それでも、陸斗にソレはできなかった。まあ、自己満足かもしれないっすけどね。
「紗夏くんは何もしていないでしょ? あくまで悪いのは、……アイツなんだから」
隼也の名前は、紗夏にとっても、聞きたい物ではないだろうと濁す。
「アイツ」という言い方でも肩が震えたから、どうやらそうして正解だったようだ。そしてそんな紗夏を見てますます「放っておけない」と陸斗は思う。たとえ自己満足に過ぎなくても、こんな風に震えている子、放っておけるワケがないじゃないっすか。
善意の押し売りで、もはや迷惑になっていようと、紗夏が納得してくれるだろう一押しをしようと口を開いた陸斗を遮るように、「しましたよ」と紗夏が震える声で、きっぱりと言い切った。
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