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 目を覚ましたからと言って、なにか劇的な変化があったワケでもない。  白色の天井は相変わらずだったし、ほんのり鼻先を擽る薬品臭も変わらない。自分の体に繋がれた機械も……1つ2つは減ったのかもしれないけれど、その辺についてはよく分からない。  寝起き、それも「普通」の寝起きじゃないからなおさら、ぼんやりと重い頭を抑えながら、ゆっくりと体を起こす。否、起こそうとして、前身の怠さに失敗した。どんだけ寝てたんすかね? ずっと寝ていると筋肉が衰えるとかなんとか言われている。もしかしたら意識が戻るまでに結構な時間が掛かっていたのかもしれない。 「おはよう、陸斗(りくと)」 「海里(かいり)!? いやいや、おはよう、って言う時間なんすか? アンタ、ちゃんと寝てる?」  さっき目を覚ました時にも、海里がいた。それも、心配そうにこちらを見つめて。  もしかしたら休んでいないんじゃないか。心配になって聞けば、海里は微笑んだ。  内心を読ませまいとしている感じが、なんとなく、した。さすがに自惚れっすかね? 「オレの事は気にしなくて良いっつーの。今は大変な時なんだから、自分の心配だけしてろって。まあ、おはよう、って時間でもないけどな」  くすくすと笑いながら海里は言う。  窓の外が窺いにくいのもあって、正確な時間が分からない。でも、もし大分時間が経っていて、その間ずっと海里が付き合ってくれていると考えると、やっぱり申し訳なくて。 「そう思うなら海里も自分のこと、気にして欲しいっす。海里が倒れたりしたら、オレとしてはそっちの方が辛いし。オレは大丈夫だよ?」 「それ、(みなと)や、はるにいにも言われた。だから港とはるにいに付き添いは変わってもらう事にしてるよ、大丈夫。今はただ、オレの我儘でお前の傍にいたいだけ」 「海里……」  それ以上は、なにも言えなかった。  オレが海里になにをしたか、なんて忘れられるはずがない。それなのに、海里はこんなに一緒にいてくれる。こんなに、オレを気遣ってくれる。  そう言えば最近、海里と一緒に過ごしていなかったな、なんて、自分がした事を考えれば当然だけれど、そんな事をぼんやりと思って。 「……ありがとう」  おそらくは、罪悪感から。情けなく震えた声で、どうにかこうにか、陸斗はそう口にした。

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