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第10話

翌日、広瀬は小森北署で報告をした後、クラブ森潟に行った。 小森北署では長谷川警部補から根掘り葉掘りクラブのことを聞かれた。 広瀬からクラブ森潟は明らかに風営法違反と思われるが、それを放置しているのか、と質問したら、お前の意見は求めていないと一蹴されてしまった。 昨夜の東城との会話もあり、大井戸署の上司の高田に早めに報告した方がよさそうだ、と思った。 夜になると、クラブ森潟は再びいかがわしい雰囲気になる。 昨日話をしたウエイターが、話しかけてきた。 「昨日話してた客のこと、リーダーに聞いたら覚えてた。前はよく来てたんだって、柴田って名乗ってる男だ。最近は来るの減ったらしいけど、また来ると思うよってさ。スタッフにお気に入りの子がいるらしいから」 そのスタッフは、4~5階の担当で、下のフロアにはほとんど来ないらしい。今日は休み、とのことだった。かなりな手掛かりになるかもしれない。はずれだと思っていた捜査だったが、鯛を釣りあげられるかも。 さらに、今日はスタッフの休みが多く、4階の各部屋に飲み物を補充する仕事を任された。4階は、指示がなければ入れない場所だ。様子を見るにはぴったりな仕事だ。 説明された通り水やソフトドリンク、ビールといった箱を台車に積み、業務用のエレベーターで4階に上がる。いくつかの個室は3階とほぼ同じで、シャワールームやベッドがあった。 フロアの端に他の階ではみなかったエレベーターがある。中を覗いてみると、駐車場から直接4階にくることができる仕組みになっているようだった。 下の階よりも、もっと違法行為が行われていそうだな。どこまで小森北署は把握しているんだ。 広瀬は、教えられた通り順番に個室をノックし、中に誰もいないことを確認して、冷蔵庫に飲料を入れていく。各部屋にはまだ客は入っておらず作業は滞りなく進んだ。 だから、その部屋も、ノックし返事がなかったので、そのまま特に警戒もせず、入ったのだ。 そこは、他の個室よりも広かった。奥の方に何人かが座っている。その向こうには、ベッド。 広瀬が入りドアが閉まる軽い音がすると、奥にいた一人がこちらに身体を向けた。昨日のスーツ姿の幹部の男だった。 「お邪魔して申し訳ありません。飲み物の補充をしようと」 頭を下げて部屋をでようとした。 幹部の男は広瀬を引き留め、「補充はしていけ」と横柄に命じた。冷蔵庫をあごでしゃくって見せた。

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