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第17話
それから竜崎は運転を東城に変わり、自分は駐車場に停めてあった車に乗り込み本庁に戻った。
東城は、車の中でほとんど話さなかった。
怒っているのだろう。
クラブの二人と長谷川警部補にはもちろんだが、自分の忠告を聞かず、ノコノコとクラブ森潟に行き、襲われた広瀬に対しても。
二人きりになったら頭ごなしに怒鳴られるかと思ったが、東城は自分を抑えているようだった。いや、怒りが大きすぎて言葉がでてこなくなっているだけかもしれない。
広瀬を自宅まで送ると、彼は、まだ片付いていないことがあるといってそのまま車でどこかに行ってしまった。去り際に戸締りをちゃんとして休めよ、と言っていた。
今日はもう帰ってこないかもしれない、と広瀬は思った。
怒っていたし、広瀬が彼の仕事を邪魔したのだ。後始末もしなければならないだろう。
広瀬は一人で家に入り、小森北署や大井戸署に連絡しなくてよいのだろうかと迷いながら食事をした。美味しいはずの石田さんの料理も砂を噛むようだ。
食事を終えたころから、急に体が冷えだした。空調を確認したが、家の中の温度はいつも通りだ。念のため体温を測ったが熱がある訳でもない。
震えながら熱めに風呂を沸かし、時間をかけて湯船につかった。だが、温まりはしなかった。
身体の中心に氷が入っているようだ。硬く冷えた塊がある。
二人の男に襲われた時、全身の血が沸騰した。強く抑え込まれても絶対に反撃してやろうと思った。
こんな男たちには負けることはない。
だが、そう思う反面、同じくらい強い恐怖を感じていた。なんとか押さえつける男を避けよう、逃げようとしていた。羽交い絞めにされてびくともしない身体で、このまま犯されてしまうという絶望に屈しそうだった。
東城たちが来て助けてくれた後、身体中から力が抜けた。
興奮状態が終わり、落ち着いたので、身体の機能が不具合を起こしているのだろう。
風呂から出ると暖かい衣類を身に着ける。ベッドに入り、毛布を追加した。だが、どうしても暖かくはならなかった。
目も冴えたままだ。休めそうにない。
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