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第19話

次の日の朝、大井戸署の高田から連絡があった。大井戸署に来るようにとのことだった。 竜崎がどのようにクラブ森潟のことを処理したのかわからないが、事態が動いたのは確かだった。 大井戸署で事情を聞かれるなり、怒られるなりなんなりするのか、と身構えた。 だが、広瀬の顔を見ると高田は、大井戸署管内で起こった傷害事件の現場に急いで行くよう指示をした。小森北署のことも、クラブ森潟のことも一切話はでなかった。 その日は現場の確認や関係者、目撃者の話の聞き込みに追われた。 夕方になって大井戸署に帰ると、別な事件を担当していた同僚の宮田が席に座っていた。宮田は広瀬の隣の席だ。上司の高田は不在だった。 彼は、周囲の人に聞こえないよう声を潜めて広瀬に話しかけてきた。 「なあ、小森北署で、なにかあったのか?」 好奇心で目をキラキラさせている。 「なにかって?」 「急に戻されただろ。まだ、あっちの事件進展ないのに。なあ、何があったんだ」 広瀬は首を横に振った。 宮田はしつこい。 「それに、さっき高田さんがすごい剣幕で小森北署の誰かと電話でやりあってたって聞いたぞ。高田さんがあんなに怒って悪態つくなんて、よっぽどのことがあったんだ、って噂になってる」 「電話でやりあってたって、誰と?」 「さあな。俺はその場にはいなかったから。だけど、相当ひどいこと言ってたらしいぜ。高田さん、普通は、怒るふりはしても頭は冷静だろ。なのに、今日は頭から湯気だして怒ってたってさ。電話は小森北署からかかってきたらしいぜ。最初は、むこうからの苦情だったみたいだ。だけど、話してるうちに高田さんが怒りだして、相手をめちゃくちゃ罵ってたらしい。お前をこっちに急に呼び戻したから揉めてるんじゃないのか?」 広瀬は黙っていた。 「しばらく高田さんがむこうの話聞いてて、質問してて、だんだん言い争いになったってさ。なあ、ホントはお前なにか知ってんだろう?」 高田は長谷川警部補と言い争っていたのだろうか。 広瀬からはクラブ森潟に行ったこともなにも高田には報告していない。高田は別ルートから話を聞いたのだろう。それで、広瀬を呼び戻す判断をしたのか。 宮田は広瀬の無表情を読み解こうとしている。だが、彼から返事がないので話を切り替える。

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