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第20話

「それと、課長のところに警視庁の福岡室長から夕べ遅くに連絡があったっていうのも聞いた」 「え?」 福岡は東城の上司だ。大井戸署の課長とは犬猿の仲だ。その福岡が課長に何を言ってきたのだろうか。 宮田は言う。「何の話だったか教えてやろうか?」 「知ってるのか?」 なんで宮田は話の内容を知っているんだ。宮田は得意げにうなずいた。 「ここだけの話、たまたまその場に居合わせた奴から聞いたんだ。知りたいだろ?」 たまたま居合わせたというのは怪しい話だが広瀬はうなずいた。 「教えてやるから、小森北署で何があったか教えろよ」と宮田は言った。それから話を続ける。「福岡室長が、課長に自分の捜査を邪魔するなって言ってきたんだ。どうも、福岡室長の捜査対象だったどこかのクラブを小森北署も捜査したらしい。本庁と所轄のよくある縄張り争いみたいなもんだな。で、その捜査してたのが大井戸署から応援に行った人間だったって」 宮田はじっと広瀬を見ている。 質問してきているが全部知っているんじゃないか、と思わせる視線だ。だけど、これに騙されて話をしては相手の思う壺だ。広瀬は黙っていた。 「福岡室長は、課長に苦情を言ったんだけど、もともとは小森北署の件だからな。福岡室長もそのことはわかってたみたいだ。課長に先に話をしてきたんだと思う。二人の結論では、小森北署に責任取らせようってことになって終わった」 宮田はそれからもったいぶって言った。 「それで、今朝になって、お前が呼び戻されて、高田さんが小森北署と大喧嘩してた。ってことは、俺の推理によると、この件はお前がらみだ。何があったんだ?クラブに捜査に行ってトラブルでもおこしたのか?」 「なにも」と広瀬は答えた。宮田は核心的なことは何も知らないのだ。 なにもって、なにがなにもなんだよ、せっかく教えてやったのに、情報っていうのは双方向で交換するもんなんだよ、一方向ってことはないんだ、とかなんとか宮田が問い詰めてきたが、そこに高田が帰ってきた。宮田は口をつぐみ、話は終わった。

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