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第21話
夜に家に帰ると東城が既に帰っていた。キッチンの大きな冷蔵庫の扉を開けて中を覗き込み何やら困った顔をしている。
広瀬が帰ってきたのに気づき、顔をあげた。
「おかえり」
「ただいま」
彼は、冷蔵庫の扉を閉め、近寄ってくると広瀬を軽く抱きしめた。
東城がサーブしてくれた夕食を食べ終わると、リビングのソファーで並んで彼が入れてくれたお茶を飲んだ。
広瀬は彼にもたれかかった。東城の身体は安定感があって気持ちいい。全身を預けても揺るがない。疲れが消えていく。
「今日、大井戸署どうだった?なにか言われたか?」と東城が聞いてくる。
「なにも、全く言われませんでした」
そうかそうかと東城はうなずいた。
広瀬は宮田から聞いた話を東城にした。
「福岡さんが手を回したんですか?」
「福岡さんはほとんど何にも知らない。大井戸署の課長に文句言えるってきいて、喜んで適当なこと並べただけだ。シナリオ書いたのは竜崎さん。竜崎さん潔癖だから、上司から部下への圧力やいじめは許さないんだよ。それと、今回は、お前以外で大井戸署から小森北署に行ってた人間がいただろ。お前のケースは最悪だけど、ほかの奴らも大なれ小なれ嫌がらせめいたことされてたことがわかった。俺は、高田さんの関係者にだけやってんのかと思ってたけど、それだけじゃないことも。自分が気に食わない奴にはやってる。まあ、残念だが長谷川みたいな奴、大勢いるけどな。今回は、お前が直接的な被害を受けたことがわかっちゃったからな」
広瀬はうなずいた。
「長谷川には責任取ってもらう」
「どうするんですか?」
「ひとまず島にいってもらうことになってる」
「島?」意外な展開だ。
「都の諸島のどこかに期間限定で応援とかなんとかいう名目でいってもらう」東城は笑った。
「長谷川、船が苦手なんだよ。しばらく船酔いで苦しめられたらいい。離島に行ってる間に、小森北署内で長谷川の身辺検査がされる。誰だって叩けば埃の一つや二つ出てくるだろう。なにが飛び出てくるかで、その後の処分も決まる」
急展開だ。長谷川もこんなことになるとは思ってなかっただろう。
「竜崎さんの警視庁内のネットワークのおかげもあるけど、今回は、高田さんが怒ってただろ。かなりそれが影響したらしい」と東城は言った。
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