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第23話

広瀬は息を吸い込んだ。じわじわと彼に楽しまれていると、呼吸するのを忘れそうになる。 「人それぞれですから」かろうじて返事ができた。 「やけに模範解答だな。お前も何か見たのか?」 「何を?」 「乱交してるの見たのか?」 鎖骨に指が触れた。形を確かめるように指先が動く。行ったり来たりしながら、首から胸に手を差し入れようかどうしようか、迷っているようだ。 「どんなんだった?」 「何がですか?」 「見たんだろ」 「あ」鎖骨の端の肩に近いところは、敏感な箇所だ。声が出てしまう。 「なあ。教えろよ」 「性行為してるのを、複数人がベッドを囲んでみていました」 「客とスタッフがやってたのか?」 「いえ。えーっと、多分、違うと思います」自分が見た刺激的な光景を思い出すと、歯切れが悪くなる。「あの、スタッフ同士がショーのように性行為をしていて、それで、それを、客が見てたんだと」もごもごした話になってしまう。正直、こんな話は恥ずかしい。 東城の唇が鎖骨と鎖骨の間のくぼみにくる。 「ショーのような性行為って、どんなだ?」 「どんなって」広瀬は言葉に詰まる。 東城の手がシャツの裾から入り込み優しく胸を撫で上げてきた。 「だって、ショーみたいだってお前が思ったってことは、それなりの見世物だったんだろ。どんな?」 「関心があるんですか?」 「質問に質問で返すのか?」 最初の遠慮深さはなくなり、彼の手がためらいもなくシャツを脱がしてきた。 「そういうことではないんですけど」広瀬は、かぶりを振った。 彼が突然乳首の先端に爪を立ててきたのだ。突起に熱い針をあてられたような刺激と痛みが走る。クリクリと爪を入れられると痛みが痺れに変わる。 「なあ」と東城は広瀬の返事をせがんでくる。 「脚を開いてました。それから、んん」言葉が途切れる。彼の手が下半身もあっさりと脱がしていく。 「それで、後ろから。入れて、て、多分、よくは見えなかったんですけど」広瀬は、裸のまま東城の胸の中に抱き込まれた。 「入れてって、何を、どこに?」 彼の手が臀部を包み込むように触れてくる。やわやわともまれた。そうしながら、彼が広瀬の耳元に唇をよせ息をかけてくる。 「何って」と広瀬は言った。つぶやいただけみたいになる。「どうしてそんなことを?」 しつこく聞くのか。わかっていることを。 「知りたいから」と東城はいたずらっぽく答える。「で、お前が教えてくれない何かを何かに入れたとこを、客に見せてたのか?」 「見えるようにしてました。そうしながら、口で、性器を」 「え?」東城が戸惑っている。 「だから、口を使って」 「おい、どういう体位なんだよ、それ。そいつらの身体どうなってんの?」 広瀬は、ああ、とうなずく。「性行為を見せていたのは2人じゃないです。3人」 「よかった。化け物かと思った。もう一人の別な奴のモノをしゃぶってみせてたのか」 東城が納得したようだった。 そんな話をしながらも、彼は広瀬をほとんど抱き上げるようにして持ち上げ、そっとソファーに横たわらせた。 足を持ち上げられ、恥ずかしいくらいに広げさせられる。広瀬の中心は既にじっとりと濡れて、薄い下ばえも双球も湿っている。 彼が優しく手で先端をなで、双球をつつんで動かした。キュッとせりあがる感覚がして、広瀬は身体を震わせる。快楽が波のようにせりあがっては戻っていき、繰り返し繰り返して、やがて、戻ることができずに吐き出した。 その後は、東城はクラブ森潟のことは話さなくなった。 彼自身、広瀬との行為に夢中になったのだろう。 それは、いつもと違って、柔らかく穏やかで、長い時間がかけられた。 彼の愛撫や耳への甘い囁きは楽しく飽きることなく続いていた。広瀬は全てを彼にゆだねて、暖かい時間を過ごすことができた。

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