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もう一つのリクライニング 4

シャワーを浴びた後、部屋に戻ると先にシャワーを浴びていたバスローブ姿の悠太がパソコンに向かってなにかをしていた。 仕事なのだろう。同年配の彼も責任ある仕事をしている多忙な人間なのだろう。 竜崎が浴室から出てきたのに気づくと、悠太はパソコンをすぐに閉じた。 彼は立ち上がり、こちらに近寄ってくる。相変わらず穏やかで人懐っこい笑顔を浮かべている。 ベッドに横たわると悠太が唇を合わせてきた。 舌が口の中を動き強くかき回される。ぶ厚い舌に全てを暴かれていくようだ。 細い鋭い先端で中を探られ、太く形を変えまさぐられていく。唾液が口の端からこぼれそうになるのを悠太はなめとった。 深いキスが身体の熱をあげる。下腹部が芯を持ちだす。 部屋の中は荒い息遣いとキスの水音だ。耳から入ってくる音も、身体をうずかせる。 キスだけしかしていないのに、竜崎は、途中から理性を手放した。悠太の腰に足を絡みつかせ、きざし始めた自身をこすりつけた。 悠太は、出会った最初から慣れていた。 経験が豊富なのだ。 指や舌、言葉で初対面なのになれなれしい男を警戒する竜崎をほぐし、溶けさせるのに時間はかからなかった。 セックスが上手い人間というのが本当にいるのだと、竜崎は知った。自分の経験が少ないせいなのか、こんな快楽を得られたことがなかった。 悠太は、自分も楽しみながら相手も楽しませることができる。 彼が竜崎の後孔にためらいなくつきいれ、ゆさぶってくると、快感に声を抑えられなくなる。 後ろからぎゅっと抱きしめられ、悠太は竜崎の反り返った中心に手を添え、痛みを感じるくらいの強さでこすり、吐き出させた。その後すぐに、自分も竜崎の中で達した。 はっと目を開け、時計を見た。 時間は、深夜に入ってきている。うっかり眠ってしまったようだ。 竜崎は身体を起こし、目をこすった。 ベッドから降り、シャワーを浴びる。着替えをして帰り支度を始めた。 「雅史?」とベッドから呼びかけられる。 悠太がベッドから体を起こし、こちらを見ていた。「帰るのか?」 「ああ」 竜崎は財布から札を抜くとテーブルに置く。 ホテル代は割り勘にしている。 竜崎は泊ったことはない。竜崎が帰った後、悠太がどうしているのか知らない。 悠太は、のんびりした動作でベッドの脇に置いたスマホをとりあげた。 時間を確認してから、竜崎に言う。 「次は、いつ会える?」 カレンダーをみている。 悠太はいつも次回の予定を決める。 忙しい竜崎の予定をおさえるのだ。急な用事で変更になっても、必ず代替の日を決めてくる。 律儀な会社勤めの習慣なのだろう。 竜崎は自分の予定を見て、いくつか候補をあげた。 悠太は一番近い日を選択した。彼は笑顔でカレンダーに登録をし、竜崎を見送った。 いつ会っても、悠太は笑顔だ。不愛想な竜崎に飽きもせず関係を続けている。

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