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第9話

ティアに撫でられるのはとても安心する……。 何だか不思議だな。今日会ったばっかりなのに…… そんな気が全くしないんだもんな。 ここの部屋のお風呂も、寝室と同じで真っ白で自分が今まで住んでいた家のお風呂との違いに驚きを隠せない。浴槽は白く滑らかで硬い。 故郷のお風呂は木で作られていて、この湯船の半分程しかスペースがなかった。 兄弟達と一緒に入るとギュウギュウで狭かったけど…賑やかで楽しかったな。 今頃……皆でご飯食べてるかな…… ふいに鼻の奥がツンとしてきた。 湯船に浸かりながらホームシックになってしまい慌てて、立ち上がり両頬をパチンと自分で叩く。 気を取り直して髪を洗う事にした。 俺の故郷アークスでは男でも女でも髪は長く基本的に腰〜お尻のあたりまであるのが一般的。 外仕事の人は束ね、内勤の人は結わない事が多い。 髪は真っ黒で真っすぐだし、今日カラちゃんがびっくりしてたけど、こっちのヴィダリア王国では髪が黒い人なんて居ない……。全体的に体も大きい人が多いし。国によってこんなに違うんだって実感する。 ……この国で……チビで真っ黒な俺は……馴染めるんだろうか……。 お風呂から上がったら ティアが髪を乾かしてくれた。今まで放ったらかしだった髪をそんなに大事に扱って貰えて何だかくすぐったい。 その後ティアがお風呂に入って。 俺は……ここに来た目的と使命を思い出してしまった。というか思い出さないといけないし俺の仕事なんだから当然なんだけど……。 でも……何からどうすればいいかなんて……俺には分かるはずもなく……右往左往……。 「また虹、百面相してる。」 といって声を出して上品に笑いながらお風呂上がりのティアが水の入ったグラスを渡してくれた。 それを受け取り一気に飲み干す。 俺の心中を察したのか…… 「……パートナーになる?……儀式……しよっか?」 パートナーになるための儀式の第一歩。 博士にちゃんと聞いていた。 その方法は唾液の交換。 要するにキス……ディープキスって言えばいいのかな。でも……お互いが欲情状態じゃないと成立しないって。 正直……軽いキスなら経験あるけど…… 深いのは……した事ないよ……。 しかも、欲情状態って……どんな時? わからないよ……。 空のグラスを持ったまま固まる俺を優しく諭して、手を引いて寝室に導かれる……。 ベッドに腰掛けたティアが俺を見上げる。 「……おいで。」

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