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第15話
「ティアはまだ授業が終わらないんだって!だからあたしが迎えに来たの!中庭で待っててって!」
そう言われ、たったか小走りのカラちゃんを早歩きで追いかける。昨日は分からなかったけど、中庭の奥まったスペースに木々で隠れて通りからは見えないこじんまりとした芝生のエリアがあった。そこでポケットからハンカチを2枚出すカラちゃん。
「これ敷いて!座るの~。」
「う、うん」
1枚ハンカチを貰って言われる通り座る。
「はい!後ろ向いて!」
訳が分からずも、言う通りに後ろを向くとカラちゃんがおもむろに俺の髪を、これまたポケットに入っていたんだろうブラシを出して梳かし始めた。
「虹の髪、まっすぐのサラサラで綺麗だからほんと楽しい~!」
そう言われてみて……ここヴィダリア王国には軽くウェーブのかかった髪の人が多い事に気付く。
「……ヒュームは……巻き髪の人が多いの?」
俺の質問にカラちゃんは、
「そうよ!ここのメグワンダ(人工母胎)から生まれた人は髪がくるくるなの!!たまに違う人も居るけど。どんな事にだって、とつぜんへんいとか!あるから。」
そっかぁ、と俺は相槌を打つ。学童で習ったばっかりなのかな。受け売りっぽさが半端ない。
……斯く言う俺も……人の事は言えないんだけど。
「そういえば、カラちゃん学童は?」
見た所7、8歳の子供だから午前中は学童があるはず……。
「あたしはいいの!もう何回も受けてるし!!」
「……そうなんだ……。」
カラちゃんにも色々事情があるのかな……。
「虹の国ではどんな学童だったの?」
そんなふとした話題から俺は故郷アークスの学童の事や兄弟の事色々思い出して、たくさん話を聞いて貰った。
数十分後……。
「はい!出来た!!」
と ポン!と肩を叩かれた。
昨日はお下げ髪だったけど……今日はハーフアップで両サイドが三つ編みになってる難しそうな髪型だった。
鏡を見せて貰って……わぁ~と感心してると
「あたし、美容師さんになりたいの!」
エッヘン!と胸を張って
「だから、虹はあたしのじっけんだいね!」
「カラ、せめて、お客さんって言ってね。僕の可愛いパートナーなんだから。」
振り返ると、背後に笑顔でティアが立っていた。
「うん!じゃあ、お客さんにしてあげる!」
と、カラちゃんは目を輝かせて俺の服の裾を掴んでぴょこんと跳ねた。
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