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第18話
「虹……?」
溢れた涙に驚いた様子のティア。
「……ぅぅ……嫌じゃないっ。……マグカッ……プ……」
言葉を続けようとするもなかなか出てこない。
ぶんぶん頭を振ると、涙の粒がはたはたと飛散して、まだ明るい窓の外から降り注ぐ陽の光に反射してキラキラしていた。
その様子をじっと見ていたティアは何も言わずにそっと胸に引き寄せ、俺の背中を優しく撫でてくれた。
ティアの胸に顔をうずめ、どのくらいそうしていたのか、密着する服や肌や髪から甘くて少し清々しい、いい香りがしている事に気づけるくらいには、落ち着いた。とても安心する。
「……あ、ありがとうティア。」
そっと顔を離す。
「虹を泣かせるなんてパートナー失格だね。」
そう言って俺の前髪をかきあげおでこにキスをくれた。二人で顔を見合わせて微笑む。
「虹、今日は一緒に夕食作らない?」
急な提案に驚いて、閉口するも二つ返事で快諾した。
研究施設の夕食は、部屋に届けて貰うデリバリー型と、自炊型、大食堂にて喫食から選択出来る。
食材はマーケットで調達。
二人で、まだ昼食後そんなに時間も経っていないのにマーケットに行って、沢山食材を買い込んでしまった。……ヴィダリア王国の食材は俺にはとても新鮮なのはもちろん、この国の事をもっと知りたいと思ったし、ティアと一緒に何か出来るのも嬉しかったんだ。
少しのホームシックと共同作業に新しい事の吸収。
俺は必然的に料理に夢中になった。
────ティアは学童の先生で、俺のパートナーで、料理の先生で、特別レッスンの……先生……。
先生ばっかりで……凄く大変そうだ……。
俺も早く、一人前にならないと……。
意を決して、ティアに告げる。
「あの、特別レッスン……して……欲しい……です……」
語尾に行くにつれちょっと恥ずかしくて声が小さくなる……。
ティアは切れ長の目を大きく見開いて、驚いている。
「ふふ、可愛いパートナーの仰せのままに。」
「でも、まず夕食とお風呂を済ませてからね。」
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