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第25話
「虹、カラ、待っててくれてありがとう。」
勝手に来ちゃったのは俺たちなのに、ティアは優しく笑う。
「ねぇねぇ、お手伝いって何~!」
教室を覗き込んでキョロキョロしながらも楽しそうなカラちゃん。
「うん、二人ともどうぞ、入って。」
教室の端っこの大きい物入れみたいなところから大切に施錠されている大きな箱を取り出し、中から書類の様な束を取り出し俺の顔を見つめながら説明してくれる。
「これね。来月の末に僕の担当のクラスの子達が卒業するんだ。それで、プレゼント作ろうと思ってね。」
「虹、絵が得意なんだってね?……子供たちの似顔絵描くの手伝ってくれないかな?」
……え?俺は確かに絵を描くのは昔から好きだったけど……そんな特別上手いって程ではない……んだけど……な……
困惑してしまった俺の心を読んだように、ティアは続ける。
「この国では近年デジタル化が進んで、手で直接紙に物を書いたり作ったり、そういうのが減っていてね、子供たちにそういう手作りの暖かさを忘れないでいて欲しくてね。」
「僕は、あいにく絵が……ちょっと下手でね。」
そこまで言うとカラちゃんが、
「アハハ!確かにティアの絵はすっごいもんね!字は綺麗なのに〜!!」
と言って、笑いが止まらなくなったのかお腹を抱えて涙を滲ませケラケラ笑う。
そんな笑っちゃう程の絵ってどんななのか気になるな……。カラちゃんの笑い声を背にして、ぐるっと教室を眺めてみると…
さっきまで、子供たちが座っていた机には一人ずつ、ノート位の大きさのモニターみたいなのがあった。
これが教科書やノートの代わりなのか…。
俺の故郷アークスでは、普通に紙の教科書とノートたくさん鞄に詰めて学童通うの、重くて大変だったのを思い出した。
やっと笑いが治まったカラちゃんに、困り顔のティアが深い溜息をついてる。
この国で、自分が何か役に立つ事が出来るのは嬉しい。それに……ティアの喜ぶ顔が、、、もっと見たい。
「……ティア、俺、頑張ってみる。」
そういうと、やっぱりティアは嬉しそうに微笑んで俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
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