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第28話
「教室に行く前に目が赤いサキちゃんとすれ違ってね。まさかとは思ったけど……。僕がもっと早くに二人にちゃんと話をしていたら良かったね。」
「ごめんね。二人とも傷付いたね。」
さっきまで泣いてた俺よりも、なんだか悲しそうな顔をしているティアに……俺のダメダメな涙腺が引き締まり涙も引っ込んでしまった。
…………今から言うことは、ウェルランド博士にはキツく口止めされてるんだよね。だから秘密ね。
────そう言って話してくれた内容は、5年前俺が故郷アークスにて初めて自分がRナチュラルだと宣告された日に遡る。
アークスでは、二次性徴を迎える10歳の子を対象とした大きな検診があって、集落に住む俺には市街地に出向ける一種の遠足の様なワクワクした気持ちだったんだよね。そこで聞かされた担当医の内容に、普通の男児として当たり前に育ってきた俺は、ワクワクからドン底に落とされることになった。
実際には、その後も何不自由なく生活出来てたんだから、取り越し苦労だったわけなんだけど、その時の心境は……きっと経験した人にしか分からないって胸張って言える。
両親に着いてきてもらってたけど、市街地の大きな病院を後にして、集落の近くまで戻り、いつもよく遊んでた裏庭の様な森で、ちょっと一人にしてもらいたくて泉で水遊びをする振りをして、こっそり泣いた。
その姿に……その時の俺に一目惚れしたんだって、ティアがにわかには信じられない真剣な眼差しで告白する。
……。
「え?!……なんで?一目惚れ??っていうか、どうしてティアがそこに居たの?!」
ガバッと音がするくらい激しく顔を上げて、穴があくほどティアの綺麗な顔を凝視する。
訳が分からなくて、早く疑問に答えて貰いたくて、ティアの服をギュッと引っ張る。
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