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第29話

「うん。ほら、僕がインターンで実習に行ってたの、虹は風邪で寝込んでて学童に来てなかったから知らないよね。」 ────そう言えば、毎年ヴィダリア王国から交流目的とインターンシップで先生が来てたけど…ヴィダリア王国のヒュームの人達はアークスの強い野ざらしの紫外線に弱くて全身真っ黒な装束に身を包んで、フードとマスクも完璧で目と指先しか出てないような服装だったから、正直誰が誰かなんて全然分からないんだよね…。 黒装束のヒュームの人はアークスでも市街地には居るんだけど、怖いっていうかちょっと近寄り難いって印象だった。 ……そっか……ティアは先生として来てたのか……。授業……受けたかったな。、、、残念。 5年前の故郷に追憶しつつ、ティアに自分だけが会えて無かったことに遺憾がつのる……。 俺の背を撫でながら頭をコツンとくっつけてくるティア。 ……当時の……学童に行けなかった一週間に思いを馳せる。 「確か……病院の帰りに泣きながら森で水浴びして、まだ涼しい季節だったから、風邪引いちゃったんだった……珍しく高熱が出ちゃって家族にすごく心配されたっけ……。」 集落唯一の診療所に高熱に慌てた両親に抱かれ訪れたらしい俺は正直意識が朦朧としていて覚えてない……。 あったかい。 ティアの体温と手のひらの……。 じんわりとした優しさに、気持ち良くて目を閉じる。 ……。 …………。 ──────── ────ああ、そっか。 初めてじゃなかったんだ。 診療所でずっと優しく背を撫でてくれていた先生が居た、、、 気がする。 きっと、ティアだ。 そう確信した。 俺が、ティアに初めて会ったのにそんな気がしないって思ったのは…… ちゃんと必然的な運命だったのか……なんて。 横並びで、ティアの肩に俺は頭を預けながら、一人ストンと落ちた気持ちに納得していた。 「偶然じゃないよ。」 ……俺の心中見透かしたような台詞が振ってきた。 ずっと思ってたけど、ティアは読心術に長けているのだろうか…。 とは言っても、たまに伝わらない時もあるし…。やっぱり、俺はまだまだティアの事、いっぱい知らないままなのは変わりないよね、、、。

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