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第31話
仮にも将来的に子を産み育てて行く二人に愛慕の情が必要不可欠だって、、、少なくてもアークスで生まれ育った俺は両親を見てきて、そう思うし、そういう努力も何もしないままで、与えられるだけでされるがままだった自分が恥ずかしい。
ティアはじっと俺の顔を見つめて、俺の頬にそっと人差し指を添え、液体をすくう。
知らず知らず涙が出ちゃってたようで……。
そっと 頬にキスをくれて優しく抱きしめられる。
「泣かないで、虹。泣かせたくないんだ、笑って?」
5年前に診療所で高熱にうなされる俺の背を撫でてくれた優しい手のひらで、なだめるようにさすってくれた。
それだけでもこみ上げるものがあるのに……
「僕が幸せにしてあげる。ずっと大好きだよ。」
……。
もう……なにそれ。
………そんなの、泣くなって言う方が無理があるよ。
ティアの一途な所と、ちょっとキザでロマンティストな所。18歳でインターンに来てたから今は23歳な事を新しく知れた。
ほんの数週間だけど一緒にいて、料理が上手いこと、背を撫でてくれる手がとても優しく暖かいこと、笑うと目尻が下がること、
そして、、、口付けがとても甘くて気持ちよくてドキドキすることを俺は知ってる。
何も知らない、、、んじゃなくてこれから知って行けばいいんだ……よね。
俺も……ティアに与えられるだけじゃなくて、ちゃんと、、、俺に出来ること……していきたい……。
「お、俺も……ティアが……す……き。」
ティアが一目惚れって言うなら、きっと俺だって、、、。研究所で見たティアに見惚れてた。
サキちゃんに図星つかれて、こんなに動揺してる自分の気持ち……。素直に言葉に出来た。
俺も……やれば出来る……。
一人折り合いをつけて、自画自賛してると、俺の顔を両の手のひらで包み、ティアが唇に触れるだけのキスをくれた。
涙でぐしゃぐしゃの俺とは対照的な……今まで見た中で一番綺麗な顔で微笑んでくれたティア。
小さい子をあやす様に、ずっとそばに居て背を撫でてくれたティアの腕の中で、俺はぐっすり、、、眠ってしまってた事に────朝になって気付いてしまった。
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