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第34話
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学童の大講堂にて、質素ながらも厳かに執り行われる卒業の儀式。
20数名の小等部の子供達が、新たなる希望に満ち未来への扉を一歩進む。
一部始終儀式を観覧していて、そんなに歳も離れていない子供たちに二ヶ月弱接しただけなのに変な親心的なものが芽生えていた俺は、つい涙ぐむ。
しかも 来月からは同じ敷地内の中等部に進む子達。分かってるんだけど妙に感動する。
一緒に式を見に来ていたカラちゃんに、
「虹はホントに泣き虫ね!」
って呆れられるくらいだ。
儀式が終了した後、俺が二ヶ月弱かけて頑張って描いた似顔絵や、ティアからの手紙、カラちゃんも手伝ってくれたラッピングの施された個包装の袋を子供たち一人一人にプレゼントする。
子供たちはその場で開封して思い思いの感想を聞かせてくれたり、友達同士見せあったり。
俺はその様子をずっと笑顔で見ていた。
そしてあの日以来、一度も言葉を交わして無かったサキちゃんが俺に歩み寄って来るのが視界に入って、一瞬固まる。
「サキちゃん、そ、卒業おめでとう。」
拳を握りしめて気合いを入れる。
この言葉は今日絶対俺は彼女に伝えようって決めていた。
「……ありがとう。」
緊張気味に話す俺の事を馬鹿にするでもなく、小さな声でサキちゃんがお礼を言ってくれた。
それだけでも充分嬉しかったけどその後、俺が描いた似顔絵を見て、もう一度、ありがとうって言ってくれたんだ。
似顔絵は、俺が一度も直接見ることが叶わなかったサキちゃんの笑顔を、友達同士で写ってるサキちゃんの写真を見て描いたんだ。
笑った顔がとっても可愛い女の子だったから、ずっと笑顔が見たいって思ったから……。
気に入ってくれて本当に良かった。
「……うん……。」
やっぱり目と鼻を真っ赤にする俺だったけど、そんな俺に容赦なくサキちゃんはキツい表情で俺に言葉を投げかける。
「ティア先生の事、必ず幸せにしないと許さないから。研究も頑張ってよね!」
そう言って少し笑って、すぐに立ち去ってしまったサキちゃん。
……呆然とする俺に、カラちゃんは
「良かったわね。」
って慰めて?くれた……。
なんだかよく分からないけれど、あったかい気持ちになったのは事実。
なんか…………女の子って…大人だな……。
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