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第35話
そんな感じで、卒業の儀式は滞りなく終了したんだよね。俺も一生懸命やれることはやり尽くした感じ。喜びや感動を皆と味わえて、ちょっとこの国の一員になれた気がして嬉しい。
今晩、ティア達教職員や関係者で祝賀会が行われるらしく、俺はお留守番。
仕方ないけど……やっぱりちょっと寂しい。
でも、明日からしばらくお休みだって言ってたからたくさん一緒に居られるはずだし。
そんな俺を横で見てたカラちゃんが、暇そうな俺を放っておけない、のか放っておくはずもなく……。
あれやこれやと、引っ張り回されて、挙句、俺の部屋でホットケーキを一緒に作ることになった。
まだ8歳ほどのカラちゃん……手際がいい。さすが女の子だなって感心。俺は下に弟が二人居て歳はカラちゃんとそう変わらないけど、全然弟達の方が頼りない感じ。妹がいればこんな感じだったのかな……ってちょっと想像すると微笑ましい。
ホットケーキっていう食べ物も俺の故郷には無かった。柔らかいパンの様な生地に甘い蜜をたくさんかけて食べる。
美味しい……。
ヴィダリア王国には甘い食べ物飲み物が多いな。ってココアをカラちゃんが入れてくれて改めて思った。
カラちゃんとはヴィダリア王国のまだ見ぬ美味しい食べ物の話で盛り上がる。
「虹は、もっと甘いもの食べて太らなきゃ!お母さんになるんでしょ?」
「えっ?!いや、まだそんな……多分なれたとしてももっと先の話だと思うよ……。」
漠然と、ティアと夫婦になれたら……そう思わないこともないけれど、まったくもって今は実感が湧かないし、他人事感が否めない……。
「ふーん、まいっか、じゃあ次は私のお客さんの番ね!!」
そういうと、ソファーに座らされて、いつもの美容師さんセットを取り出して俺の髪を結い始めるカラちゃん。
人に髪を触られると気持ちいい……。
お腹いっぱいになってるし、卒業の儀式での緊張も解れ開放感に安堵しつつ、すごく気持ちよくってついウトウトしちゃってた。
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