55 / 64
第55話
「ずいぶんと、派手にやったな。」
ウェルランド博士にそう言われて目が覚めた。
寝起きでびっくりする間もなく、ティアの腕の中でぱちくり瞬きをする俺を見て、ケラケラと楽しそうに笑う博士。
俺の上衣も襟元全開に開けられてるし……いつの間に……
博士に首元を撫でられ……くすぐったくてぎゅっと目を閉じる。
「歯型……ついてるじゃないか。可哀想に。」
言ってる言葉とは裏腹に顔がニヤついている。
「……本当に申し訳ないと思ってます。」
ティアが項垂れる。
「お前の発情期は激昴型だからな。これくらいで済んでまだ軽い方だ。相性が良くて何よりだな。」
……やはり、抑制剤は相手の体液に相殺されるな……
最後は独り言のようにブツブツ言いながら博士は腕を組み少し遠い目をする。
けどすぐにこちらに向き直り
「さっさと診察に行ってきなさい。…まぁ今日はゆっくり休んでおけ。」
何かのデータの解析に忙しいらしい博士はそう言うとすぐコンピュータの端末の操作に没頭し始めた。
そのままティアに連れられて、カプセル室に行って先にデータ転送のカプセルに入ることに。
その間、ずっと話し声が聞こえてたからティアと担当医の先生が話してたんだろうか。
そして検診。今日はティアと一緒。
今までずっと1人で受けてた検診にティアが居るとちょっと緊張しちゃう……。
でも、今日は俺……声が出ないし仕方ないよね。
俺の担当医はいつも少し無愛想で、長い前髪とメガネで顔の表情は見えないし、必要な事しか話さないタイプだからとても気が楽だったんだよね。
俺は喉や上半身を隈無くチェックされる。
いつもの検診なのに何だか見られてると思うと、恥ずかしい……。
担当医はコホンと咳払いをして一呼吸置いてから口を開く。
「ティア君。いくら発情期と言えどパートナーの身体的負担が次の日に残るような抱き方は感心しませんね。声帯と皮膚の擦り傷への薬を処方しましょう。」
「はい、すみません。ありがとうございます。」
ティアが頭を下げる。
え……俺、風邪じゃなかったんだ……。
ん?抱き方?……どういう事?
それもよく分かんなかったけど、それよりまたティアに謝らせてしまったのが気になって……。あれは俺が無理やり誘っちゃったようなものなのに…と申し訳なくてチラッとティアの方を伺うと、
……ティアは予想外に笑顔で。
……??
訳がわからずティアと担当医との顔を交互に見比べる俺。
ともだちにシェアしよう!